4月10日号NO.5

バランス欠如、組織防衛、世論作り

許されない恣意的な摘発
説明が大変になるのは自明

元東京地検特捜部長 宗像紀夫

 私は、小沢一郎氏の公設秘書の逮捕・起訴は、政界ルートの入り口だと見ています。私の経験から言えば、当然、検察は次の事件を捜査していると思わざるを得ません。そうでなければ。この程度の事件は、政権交代も考えられる選挙が迫った時期に、摘発するに値するものでしょうか。

私は検事だったときにリクルート事件などを手がけましたが、政治資金規正法違反を武器に政治家に襲いかかるようなことはなく、贈収賄、談合、脱税、特別背任といった中身の濃い事件で摘発してきました。

 しかし、いつの間にか、政治資金規正法に対する考え方が変わってきたのでしょう。この法律に対する価値基準が変わったのですね。検察が変えたと言うべきかもしれません。検察側はこう主張するでしょう。「政治資金が適正に扱われないから政治家の腐敗が起きる。だから、そこを断つことが重要なのだ」
 これを政治家の側からすれば「変わったのならまず警告を発すべきではないか。いきなり逮捕されてはたまらない」となります。

西松事件で議論になっているのは政治家側(小沢氏側)と検察側の間に起きている。〝常識のすれ違い“のようなことでしょう。

実は、いま問題になっている二つのダミーの政治団体に類似する団体は、山ほどあります。それらの団体からの献金は黙認して、なぜ小沢氏のケースだけを摘発するのか。橋本龍太郎元首相に手渡された裏金の1億円(小切手)をめぐる04年の「日歯連ヤミ献金事件」では、橋本氏らは不問で、派閥の会長代理だった村岡兼造氏が在宅起訴されました。

このとき同時に日歯連から自民党の政治資金団体「国民政治協会」を通して自民党の国会議員に多額の献金が行われていることが判明し、一部で問題視されましたが、結局、誰も摘発されませんでした。

 しかし、この国民政治協会経由の献金と、西松建設事件の献金とどこが違うのか。となるとやはり検察には、今回の事件についての説明責任があるでしょう。検察は決して、恣意的に事件を摘発してはいけない。
公平に見える捜査をしなければならない。

 これまでの検察は、たとえばリクルート事件では、与党側として自民党の藤波孝生元官房長官(故人)、野党側として公明党の池田克也元衆院議員を同時に摘発しました。これがバランス、公平ですね。
 公平に見えない捜査をすると、後で説明が大変になるのは自明の理です。
権力は抑制的に使うべきです

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