アイヌ政策に潜む北海道自治区化の危険

2019年11月4日発信。
大高未貴氏の論考の続きとして、菅義偉官房長官との質疑、アイヌ新法、アイヌ先住民族認定、国連の「先住民族の権利に関する宣言」、北海道自治区化構想、そしてアイヌ政策に対する中国や北朝鮮の関心を取り上げる。
慰安婦問題と同様に、初動で史実と証拠をもって闘わなければ、日本の安全保障に関わる深刻な問題へ発展しかねないと警告する。

2019-11-04
中国が異常な興味を示し、あからさまに北の工作が見え隠れするアイヌ政策を、日本政府が進めようとするのはなぜだろうか。
以下は前章の続きである。
菅官房長官の見解。
去る9月22日、星陵会館で櫻井よしこ氏が主宰する「言論テレビ7周年感謝の集い」に菅義偉官房長官がゲストとして招かれ、パネリストとして参加させていただいた私も菅氏に質問する機会を得たので、そのやり取りを紹介しよう。
読みやすくするため、口語体から文語体にしているが、発言内容は変えていない。
大高。
「菅官房長官は『アイヌ政策推進会議』の座長を務めてらっしやいますよね。
アイヌが“先住民族”としてアイヌ新法に明記されてから、いろいろと辻棲の合わないことも生じております。
たとえば歴史に関する記述でも、『北海道はアイヌの土地であって、明治以降、倭人が侵略をしてアイヌが虐殺、差別されてきた』といった趣旨のことなども、文科省の指導要領とかに書かれていますが、これって歴史の改竄ですよね?」
菅。
「そこに私はどのように書いてあるか知りませんけれども、少なくとも私どもがやろうとしているのはアイヌの人々が北海道の先住民族だったということ、これは事実だと思います。
まあ、そういう中で、名誉と尊厳ということを保持し、次世代へと継承していくためにアイヌ政策を今回『推進法』でやろうということを今私もやっているということです」
大高。
「先住民族であるというのも、まだ議論が分かれている段階だと思いますが、実はアイヌ政策に関して北朝鮮の主体思想の指南役・尾上健一さんという方が80年代に書いた本に(日本を自主化するための)アイヌ政策が書かれていて、今の日本政府のアイヌ政策が主体思想とまるっきり一致して進められている。
また、現在のアイヌ協会の中にも、主体思想関係者が数名在籍し、どうして日本国でありながら、このような北の影響を受けた政策が行われているのか。
また、アイヌ協会の最終的な目的がアイヌの自治権の確立、つまりアイヌの自主憲法、国旗の制定とか、そういったところまで議論されているので、これは国家分断工作と言っても過言ではないような懸念がありますが、官房長官はどのようにお考えでしょうか?」
菅。
「そこについては、私はそうしたことは正直感じておりません。
私ども、このアイヌ政策を実行するにあたり、アイヌの中でも色々と対立する方がいらっしゃることは事実ですが、全部がそうではありません。
アイヌ民族と言われる人たち全員の方が、まとまっているわけではないということも、承知しております。
しかし全体としてみれば、そこはそういうことではないという風に思っております」
大高。
「では菅官房長官、アイヌ政策推進会議の座長として、アイヌの自治権などは絶対に認めないという方向性で解釈してよろしいでしょうか?」
菅。
「いや、あの、そこは求めてないと思います」
大高。
「一応、(札幌アイヌ協会の)議事録にはそのように書いてあったんですけど、大丈夫でしょうか?」
菅。
「いや、自治権ということまではないと思います」
杉田水脈衆議院議員。
「アイヌのことに関しましては、関心を持たれている方も多いと思いますが、実は、2008年に『アイヌが先住民族である』ということを閣議決定しております。
また、日本は国連とも人種差別撤廃条約というのを結んでおり、その条文の中には先住民族に対し『こういう政策をやりなさい』『こういう風な文化を残しなさい』とありますので、政府もそれに沿って進めていかないといけないということがあります。
ですので、ここ一、二年でアイヌが出てきたわけではなく、そういった背景すべてを理解していただきたい。
そんな中、多分今お話ししにくい中を官房長官はお話しして下さったと思うんです」
杉田議員の話を補足する。
2007年に国連で「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が出され、「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」代表の元自民党衆議院議員・今津寛氏や鈴木宗男氏らが旗振り役を担い、2008年6月6日「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案」が衆参両院において全会一致で可決している。
両氏の功罪について、正鵠を射た論評を紹介する。
「鈴木宗男・今津寛両衆議院議員が論拠としてよくあげていたのが花崎皋平著『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波書店)である。
彼は著作において、アイヌの困窮は松前藩や幕府の支配が及ばないところで行われる悪徳商人の横行と、統制が及ばずに野放しにされた資本主義経済、そしてアイヌ部落内の身分制度がアイヌの惨状をまねいたことを厳しく糾弾している。
(略)
これが両氏によって“和人=加害者”“アイヌ=被害者”という構図で国会に持ち込まれ、わが国の歴史にとりかえしのつかない、しかも全く史実に基づかない汚点を刻み込んだ」
『科学的“アイヌ先住民族”否定論』的場光昭。
同著は、「全会一致」は十分な議論の機会も与えられないまま、ゲリラ的に進められ、詐欺に等しいやり口だったこと、鈴木氏や今津氏が先を急いだ当時の政局にからむ打算の裏事情などにも触れている。
北海道自治区化計画。
菅官房長官は、アイヌが先住民族だと認めつつ、アイヌの自治区は認めないという。
よく考えてみれば、これは矛盾してはいないだろうか。
アイヌ先住民族認定はアイヌ自治区確立のための布石なのだ。
その証拠に尾上健一氏はこう書いている。
「多くのアイヌ民族が住んでいる北海道を特別自治区にするということも重要でしょう。
(略)
いわゆる北海道の歴史というのは100年しかなく、それ以前の歴史はアイヌの歴史です。
しかし、北海道を特別自治区にするという課題はいますぐに成熟した政治課題にはなっていません。
このような政治的課題に先行するのが『アイヌ民族に関する法律』を制定していく課題です」
『自主の道』尾上健一。
自治区の危険性については、小野寺氏が重要なことに触れている。
2019年10月3日、「チャンネル桜 北海道」の放送において。
『先住民族の権利に関する国際連合宣言』(国連総会第61会期/2007年9月13日)の中に軍事活動に関する規約があり、その内容は、
「第30条 軍事活動の禁止①関連する公共の利益によって正当化されるか、もしくは当該の先住民族による自由な合意または要請のある場合を除いて、先住民族の土地または領域で軍事活動は行われない。
②国家は、彼(彼)女らの土地や領域を軍事活動で使用する前に、適切な手続き、特にその代表機関を通じて、当該民族と効果的な協議を行う」というものだ。
主体思想が浸透した北海道自治区化計画は着々と進んでいる。
菅官房長官は自治区を否定したが、朝鮮半島や中国の対日侵略戦略は十数年から百年単位の長期的な視点で実行されている。
この先、現政権が力を失い、悪夢の民主党のような政権が甦ったとしたら、“アイヌ先住民族北海道特別自治区制定”を行う危険性がないと一体誰が保証できるだろうか。
万が一、自治区に認定されてしまったら、自衛隊が「アイヌ自治区」などと示された地域に駐屯できないという事態に及んでしまう危険性はないのか。
もちろん、これは杞憂にすぎないのかもしれないが、それほどの不安を抱かせる問題なのだ。
同じ過ちを繰り返すのか。
現に慰安婦問題だって90年代初頭に日韓の反日活動家と朝日新聞が火付け役を担って展開されたプロパガンダだが、日韓合意を経たにもかかわらず、海外の慰安婦少女像も増え続け、現在進行形で収束の気配はない。
慰安婦問題の失敗は最初に先手必勝で史実と証拠を武器に闘わなかったことで、慰安婦証言の十分な検証も怠ったまま「ここで日本が謝罪してくれれば、韓国は未来永劫歴史問題に触れないでおく」などといった韓国政府の口車にのせられた日本政府の責任は否めない。
なぜ同じ過ちを繰り返すのだろうか。
しかもアイヌ・キャンペーンは慰安婦問題より事態が深刻だ。
なぜなら安全保障に関わる要因を秘めているからだ。
中国が異常な興味を示し、あからさまに北の工作が見え隠れするアイヌ政策を、日本政府が進めようとするのはなぜだろうか。
私見を述べさせていただく。
アイヌ利権はもしや朝鮮半島南北統一における間接的な資金援助に通底しているのではないかという疑念だ。
長年、慰安婦問題を研究してきているが、’サハリン残留韓国人帰還問題―慰安婦問題―戦時労働者問題(徴用工)’ と順を追って用意されてきた歴史問題には、将来的な日朝国交回復時における戦後補償が絡んでいることを気付かされた。
この稿続く。