小沢氏の本音 中段 週刊朝日2010年9月17日号から。
芥川賢治の思い…僕は、この120分に及ぶインタビュー記事を、今、態度を決めかねている国会議員や地方議員の方、サポーターの方たち全ての人が読むべきだと思う。週刊朝日の力と菅原文太の人間力で120分もの独占インタビューが為された訳です。
小沢一郎と会った事がある、或いは、民主党の国会議員だって、彼と120分、話をした事がある人はいないはずだと思うからです。
ただ残念なのは、これだけ素晴らしい週刊誌が、たった26万部の発行部数しかなく週刊実話や週刊大衆よりも少ないという事。真実こそは1人でも多くの人が知るべきなのですから。
―革袋に入っている古酒の二つ目は、「米国追従」一辺倒の姿勢です。これが、自民党時代からまったく変わつていない。小沢さんは「日米中の関係は正三角形であるべきだ」と言ってきましたが、菅さんは沖縄の「お」の字も言わなくなってしまった。
政治・経済システムが基本的に一緒の日米関係が、非常に緊密で大事な関係であるのは間違いありません。ただ、中国は隣国で、文化的にも長年影響を受けた国だし、大国ですから、同じように大事な関係だと僕は言ってるんですよ。
今いちばん心配しているのは、日本が米国や中国から、心の中ではほとんど相手にされていない現実があることです。僕はそれが非常に悔しい。米国や中国にとって日本は「まあ、最終的についてくるだろう」という感覚ですからね。
日本は、外交・安全保障にしても、政治や経済の問題にしても、自己主張がない。そこが大きな問題です。僕はこれまで日米交渉を何回も経験してきましたが、キチンと自分の意見を主張すれば、相手も「オッ」と思ってくれる。それで信頼関係ができるんです。
「普天間」の鍵は 米国のジレンマ
そもそも、同盟関係とは対等なもので主従関係じゃない。にもかかわらず、例えば、イラク戦争開戦の際、日本への事前連絡はなく、戦争が始まってから「いまさっき始めた」と連絡が入た。どうせ日本に言ったって何も協力してくれるわけじゃないし、言えばすぐに情報が漏れるし、という扱いなんですよ。
ーそんなのは同盟じゃないじゃないですか。先日、沖縄へ行って、辺野古(名護市)の美しい海岸を見ながら、こんなところに滑走路を造ってはダメだろうと思いました。小沢さんは2日の公開討論会で、「もう一度、沖縄県民や米国と話していい知恵を出せないか」と言つてたね。あれは、どういう意味ですか。
鳩山内閣が結んだ日米合意は尊重しなくちゃいけないけど、沖縄県民が反対する限り実行できません。強制執行なんかできっこないんですから。すると、米軍は普天間基地を今までどおりに使うことになるけど、現実問題としてそれもできなくて、お互いニッチもサッチもいかなくなる。だから何とかうまく進めなくちゃいけない、ということを申し上げたんです。
―普天間問題の解決は可能だと?
米国としても、兵器や軍事技術が発達し、前線に大きな兵力を配置しておく必要はないと考えている。だからこそ、海兵隊をグアムへ移転させるのでしょう。沖縄に基地を残すのは、テロなどの緊急事態に備えたアジア全体の基地機能のことを考えているからじゃないでしょうか。
ただ、米国も沖縄県民の反米感情を刺激するのは、政治的にマズいことは理解している。他の基地にまで波及する恐れが出てきますから。そこに米国側のジレンマがある。だから、具体的によく話をすれば、いい知恵が出る、と僕は言ってるんです。
ーもう一つ、民主党の古酒として気になるのがポピュリスム、大衆迎合です。
いまの政治は、いたずらに大衆におもねっている。それが偽善的な世の中をつくつているんだよな。
政治家は選挙がありますから、ある程度、人気商売になるのは仕方おりません。ただ、権限の強い職責に就いた議員は、ポピュリスムに陥ってはいけない。ましてや首相は最終決定権があるんですから、自分が生き永らえることじゃなくて、自分を犠牲にしてでも国と国民が生き永らえることを考えないとね。
―こうやって聞いていると、小沢さんがやろうとしていることは国を変えることだよね。でも、今までの仕組みを変えたら、既得権を失う勢力から強い反発が出る。ますます嫌われ者になっちゃうよ。(笑い)
そりゃあ、ある程度は覚悟しないと変革はできません。「ボク、憎まれるのイヤだ」なんて言ってたら、いままでと何も変わりませんよ。(笑い)
―そのとおり! どんな立場でも、男は「嫌われるのがイヤだ」とか「何とか好かれたい」なんて馬鹿なことは考えたらいかんよね。嫌われようが、どう思われようが、やはり自分の信念を通す強さがないと。
…それは、小さな政府になるってことですね。明治維新の逆をいくんだな。
いまや「廃県置藩」という言葉もありますからね。ほかにも、約600兆円ある国の資産のうち200兆円ほどは証券化できるという意見もある。要は、財源を捻出する知恵は、いくらでもあるってことです。
―菅さんもかつては予算の組み替えを掲げていましたが、首相になった途端に、日本が財政破綻危機のギリシヤの二の舞いになると言いだして「財政再建派」になった。
日本がギリシヤになることは、絶対にありません。
ギリシヤは国有資産がほとんどないから純債務国だけど、日本の場合は、国債はほとんど国内でまかなわれているし、国有資産も潤沢にある。多額の借金があるのは事実だけど、現状で効率よく、ムダを省いてやれば、いまの必要分は十分出てきますよ。債務超過に陥るというのは、消費税を上げたい財務官僚のマインドコントロールです。
繰り返しますが、要するに、首相が自分自身の考えを持っていないとできない。組み替えといっても、各省から出てくる予算案に対し、政治家が優先順位を付けて取捨選択すればいいんです。
概算要求の一律10%削減という菅さんのやり方は、自民党政権下の官僚主導の予算編成と変わりません。
―確かに、小沢さんなら官僚にズバッと言えそうだ(笑い)。この代表選でいちばん訴えたいことは、やはりそのリーダーシップですか?
個人でとらえればリーダーのあり方だし、全体的にとらえれば「政治圭導」ということになる。それを確立しない限り、何もできないじゃないですか。
役人の言うとおりにやっていたら、自民党よりも悪くなってしまう。自民党には、まだ官僚に文句を付けられるだけの力のある人間がいたけど、いまの民主党にはいませんから。これでは国民から見放されてしまいます。