アジア外交知中派退潮 米政権、知日派が中枢に…朝日新聞9面から。
オバマ米政権でアジア外交を担う主要幹部の大幅な刷新が大詰めを迎えている。2人の「知中派」が退任する一方、「知日派」が中枢ポストに昇格。対日重視を打ち出しつつ、来年の大統領選もにらんでホワイトハウスの指導力を強めた実務型の布陣が浮かぶ。
刷新の最大の特徴は、政権発足当初から対中関係強化を主導し、ときに弱腰との批判も浴びてきた「知中派」の退潮だ。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のペーター・アジア上級部長は15日付で退任。対中政策の理論的支柱であるスタインバーグ国務副長官も、夏には米国内の行政大学院長に転身する。
後任には、日本勤務経験が長いラッセルNSC日本・朝鮮部長、中東政策を担ってきたバーンズ国務次官(政治担当)をそれぞれ内部昇格させる。ともに調整能力にだけだ評価の高い職業外交官だが、中国は専門外。対中外交では、安全保障政策全般を統括するドニロン大統領補佐官が直接指揮を執る比重が高くなると見られている。
新たな顔ぶれでも大筋では「アジア全体へ関与を強める方向性は変わらない」 (ジョンズ・ホプキンス大学のランプトン教授)との見立てが大勢だが、とりわけ対中外交は米国内雇用や人権問題とも絡んで、来年の大統領選での攻撃材料にされかねない
オバマ氏は4月末に退任して大統領選への出馬準備に入るとされるハンツマン駐中国大使の後任に、中国系米国人のロック商務長官を指名。対中輸出拡大をてこ入れするとともに要所に実務型のベテラン外交官を配し、対中外交をホワイトハウスが強く掌握する構図がにじむ。
対日外交では、在大阪・神戸米国総領事や国務省日本部長などを歴任したラッセル氏の昇格は日本にとって好材料となりそうだ。
一方、知日派の代表格で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題などで国防総省の要となってきたグレッグソン次官補が3月末に退任。後任に名が挙がるリッパート前NSC首席補佐官は、対日政策に携わった経験はなく、これまで以上に半ヤンベル国務次官補の存在感が増しそうだ。その下で実務を担う日本部長には、若手日本通の有望株で、在イラク米国大使館のナッパー参事官の就任が見込まれている。
(ワシントン=村山祐介、伊藤宏)