共和党の新予算案「繁栄への道」の正体…ニューズウィーク4月20日号から。
筆者:ジョナサン・チェート(ニュー・リパブリック誌シニアエディター)
…前略。
ティーパーティー誕生のきっかけは09年2月。ケーブルテレビCNBCの経済評論家リック・サンテリが中継中に、焦げ付いた住宅ローンに関するオバマ政権の救済策を批判。ボストン茶会事件になぞらえて「ティーパーティー」という言葉を使い、抗議活動を呼び掛けた。
中継映像のコピーは全米に広まった。オバマに反発する人々は「ティーパーティー」という言葉に反応し、サンテリの政権批判に賛同した。まっとうに生きて成功している人からカネを取り、貧しくて医療保険にも入らずに破産した「負け組」に施すというのか、と。
サンテリは思いやりに欠ける表現だったとすぐに認めたが「自分は結局はアイン・ランド主義者だ」とも語った。
アメリカ人小説家で政治思想家のアイン・ランドは20世紀の政財界に影響を与え、熱狂的な信奉者も少なくない。
彼女の全体主義的な哲学の核心はマルクス主義をひっくり返したもので、労働者ではなく資本家がすべての富を創出し、資本家ではなく労働者こそが無益な寄生者だと見なした。
*いやー、アメリカは実に、「言論の自由」、の国なのであります。本物の百家争鳴だから致し方の無い事で。
ティーパーティー運動が盛り上がるなか、ランドはあらゆる場面に登場した。著書の売り上げは急増し、彼女の言葉を引用したポスターが各地の集会で掲げられる。ランドの小説『肩をすくめるアトラス』では、リベラル政権が経済の崩壊に加担する。保守派の論客は、オバマ政権で起きていることがこれに不気味に似ていると主張した。
ライアンもそう主張した1人だが、世論に迎合したわけではなく、彼は昔からの「ランドおたく」だ。以前にもある集会でランドの哲学を称賛している。「私か公職を志した理由として、影響を受けた思想家の名前を挙げるなら、アイン・ランドだ」
…中略。
だがそれを言うなら、アメリカ人の約7人にI人(そして子供の約4人に1人)がフードスタンプに頼っている。
…中略。
赤字削減案の階級格差
[繁栄への道]の階級格差は分かりやすい。最も貧しい国民が、直ちにあからさまな予算削減に苦しめられる。中流層は遠い将来、社会保障が削減されるかもしれない。そして最も裕福な国民は、今すぐ棚ボタの恩恵にあずかるだろう。
…後略。
小見出しは…新予算案は貧しい人から 現金収入を得る機会だけでなく 食べる機会や医療を受ける機会さえも奪おうとしている