4月19日、日経新聞朝刊2面から。

黒字化は芥川。

15日、首相官邸。菅直人首相は福島県産のイチゴとキュウリをほお張り、JA福島中央会の庄条徳一会長の前で「おいしい」と持ち上げた。放射性物質が飛散した福島第1原子力発電所の事故を受け、消費者が近隣の農作物を敬遠する風評被害。首相が率先してアピールしても、終息する見通しはたたない。
 
準備不足否めず
 
東日本大震災は直接的な被害に加えて「情報危機」ともいえる状況をつくり出した。「製油所火災で有害物質が雨と一緒に降る」
「放射線被害にはうがい薬を飲むといい」。インターネットなどを通じて出回ったデマは数知れない。
 
膨大な情報をすべて管理するのは不可能だ。政府の危機管理は正確、迅速でわかりやすい情報を提供することに尽きる。
ところが、肝心の政府の情報発信が、混乱の原因になっているケースが少なくない。
 

農産物や魚介類への放射性物質の暫定規制値は、原発事故を受けて急きょ設けたものだ。準備不足は否めない。最初の出荷制限の発表が3月21日。この時、どんな基準で解除するのかの言及はなし。結局、週1回の検査で3回連続で規制値を下回れば解除するとのルールが決まったのは2週間後だった
  
「疑念」内外で深まる

県や市町村に連絡がなく、科学的な根拠も示されなかった」。福島県の佐藤雄平知事は11日の記者会見で、原発事故に伴う政府の避難指示の出し方を批判した。計画的避難区域、緊急時避難準備区域……。発表を重ねる避難基準は、内容も根拠も伝わりにくい
 
緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)。原発事故で放射性物質の拡散状況を予測して避難の判断などに役立てるシステムだ。ところが、原子力安全委員会が分析結果を公表したのは東日本大震災の発生から12日後たった。 

定まらない姿勢
 
災害心理に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠元教授は「政府が情報提供に慎重になると、逆に不安をあおる」と対応に疑問を示す。一方で政府内にはSPEEDIについて「もっとデータを整備してから出すべきだった」とする意見が今もある。パニック防止と情報公開の間で姿勢は定まらない。
 
政府の情報発信のおり方は他国を巻き込んで波紋を広げた。
  「
原発から20~30キロ圏内の数値はただちに人体に影響を与えるようなものではない」。枝野幸男宣房長官が同圏内を屋内退避指示とする妥当性を説明した3月16日。米国は同日付で、福島第1原発から80キロ圏内の自国民に「予防的措置」として避難勧告を出した。日本が放射性物質拡散の予測を示さない中、独自の前提による決定だった。
 
日本産食品への輸入規制をかけた国は50力国以上にのぼる。3月に来日した外国人は前年同月から半減した。諸外国の行動には過剰と思えるものもあるが日本はもっと詳しく情報提供してほしいという声が強い」(国際原子力機関りIAEA)。情報不足が「政府は何かを隠している」という疑念を招く悪循環だ。 

政府の危機管理担当者は「情報対策が場当たり的になっているのは否めない」と言う。

各国への通告が遅れた東電による低濃度汚染水の海洋放出以降は、批判や不満が一段と強まった。

反省を生かすのが次の災害時では遅すぎる。(おわり)

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