経営者が選んだ注目銘柄⑦ 伊藤忠商事…日経新聞1月14日15面より
伊藤忠商事
2011年秋、米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の創業者ヘンリー・クラビス氏が日本へ飛んだ。訪問先は東京・青山の伊藤忠商事本社。
総額5400億円の米石油・ガス会社への共同投資を求め、岡藤正広社長と面会した。「顔を赤くして説明してくれた。これはいい話、と思った」と岡藤社長は話す。
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交渉の最終局面ではKKRからの要求をはねのけ「平等なパートナー」の線で条件を詰めた。他の大手商社が「審査が間に合わない」と断った案件。「以前なら考えられないスピード」(伊藤忠幹部)で、多額の出資が決まったという。
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ただ、やみくもに攻めているわけではない。硬直的な投資ルールを緩和した一方で、経営会議で否決される案件はむしろ増えた。
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繊維畑一筋で海外駐在や経営企画業務も経験せず、社長就任までの大半を大阪で過ごした岡藤社長だが、メリハリの効いた経営ぶりに外国人投資家の信頼も厚い。
外国人持ち株比率は初の40%に迫り大手商社トップ。「実行力があり、会社が変革しているイメージを外国人も好んでいる」(野村証券の成田康浩アナリスト)
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「あと4年は続ける」。と公言する岡藤社長に株式市場も「今後、何で稼ぐのか」という問いへの回答をせかす。
しかし、岡藤社長は今後の大ビジョンはあえて示さない。上からの改革で基盤を固める一方、次の稼ぎ頭はボトムアップで、社員が現場を足で回って見つけるべきだと考えているフシがある。
「商社の経営は水みたいなもの。容器に合わせる。社員はどんどん外に出て顧客や市場の変化をいち早くつかんできてほしい」。年約1400時間あった社内会議は半減させた。(山下晃)