輸出立国岐路に 超円高赤字固定化も…朝日新聞1月26日7面より
11年貿易統計
貿易収支が31年ぶりに赤字になった。自動車や半導体を中心に輸出で稼ぐ「貿易立国」だった日本で、輸出を輸入が上回る異常事態だ。東日本大震災の影響でエネルギー資源の輸入が急増しだのが主な原因だが、超円高が続けば輸出の長期停滞も見込まれる。赤字は一時的なものなのか、定着する転換点なのか。
…中略。
輸出額から輸入額を引いた貿易収支は2兆4927億円の赤字だった。日本エネルギー経済研究所の試算によると、発電に使う化石燃料の輸入は、12年度は10年度より3兆円強も増える。その一方で輸出が円高で足踏みすれば、12年以降も貿易赤字が続く可能性が出てきた。
バブル期の巨額の貿易黒字は米国などとの貿易摩擦を生んだ。しかし、貿易赤字の定着にも問題がある。経常収支の悪化だ。
経常赤字になると、日本からお金が逃げ、資本を外国から借りざるを得ない。政府の借金である日本国債は、今まで9割以上を国内の投資家が買ってきたが、外国人の保有割合が高まれば、世界のマネーや景気の影響を一層受けるようになり、財政運営の不安定さが増す。
貿易赤字が続けば、所得収支で稼がないと経常赤字になる。所得収支の黒字は、05年に貿易黒字を上回った。11年の経常収支でも2・5兆円の貿易赤字を穴埋めし、トータルで10兆円弱の黒字を確保したようだ。ただ貿易赤字の定着・拡大が、将来、経常赤字につながるとの懸念も、有識者の間にはくすぶる。
高齢化で貯蓄の取り崩しが急速に進み、投資に回すお金の基盤が薄くなることなどが、そうした見方を後押ししている。(福山崇)