メガ市場、中間層が築く…日経新聞1月29日1面より
アジア消費をつかむ ファン求め本社移転
…前略。
シンガポール随一の繁華街、オーチャード通り。日一本の新興衣料ブランド「サティスファクション・ギャランティード(sg)」を運営する佐藤俊介社長(33)は2月に開くファッションショーの準備に奔走する。昨年10月、アジア95万人のラブコールを受けてこの地に本社を移した。
sgは世界最大の交流サイト(SNS)フェイスブックで日本企業2位の98万人のファンを抱える。実は97%が日本以外のアジアに住む。
インドとインドネシアのフェイスブック利用者は4000万人超と日本のほぼ6倍で世界2位、3位。sgは英語で発信しネット投票で商品化する服を決定。IT(情報技術)を使いこなすことで分厚い若者層に潜在顧客の山を築いた。「アジア展開のために日本から拠点を移す」(佐藤社長)のは必然だった。
Sgが狙う消費力はネット上の幻ではない。上海の11年の月額法定最低賃金は01年比2・6倍、ジャカルタは同3倍に急伸した。所得の上昇がアジアの中間層を膨らませる。
英調査会社のユーロモニターインターナショナルによると、中国、インド、インドネシアで可処分所得が年間5000ドル以上3万5000ドル未満の中間層は、10年時点で約3億2000万世帯。
15年には約4億3OOO万世帯と3割強増える。日本、米国、欧州連合 (EU)の合計は約1億2000万世帯で横ばい。3力国だけで先進国の3倍もの中間層が誕生する。
…中略。
だが、欧米勢は一枚上手。有力ブランドが香港市場に相次ぎ上場、資本戦略に踏み込みアジア開拓を加速する。その一つ、米コーチのルー・フランクフォート会長兼最高経営責任者(CEO、65)は「中国が(売上高で)今後数年以内に日本を追い抜くと確信している」と断言。
伊プラグは上場により約1740億円を調達、日本以外のアジアで年20~25店を新たに出す。12年の日本を除く東・東南アジアの実質成長率予想は、他地域をはるかに上回る7・2%。約41億人もの人口を抱え、成長を求めて世界が照準を定めるアジア市場。日本勢が勝ち抜くことは容易ではない。