米ファンド巡り神学論争…日経新聞1月29日13面より

2つの皮肉、複雑さ映す
…前略。
統計的にはどうか。シカゴ大学のスティーブン・デービス教授らが過去3200案件を調べると、投資ファンドに買収された企業は2年間で平均3%、5年で6%雇用が減った。
しかし、新分野の採用増や人員の再配置などを考慮すると影響は1%未満。功罪両面はらむが、ほぼ中立との結果となった。
今のファンド論争には、2つの皮肉が含まれる。1つは、富の偏在の象徴とされる投資ファンドを支えるのが中間層の年金マネーという皮肉だ。
金融危機は、投資ファンドの機能をより深く米経済に組み込む契機になった。全米最大の年金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が「投資ファンドへの資産配分を10%から14%に高める」と決めたのは、危機直後の2009年夏のことだ。
株価の下落や債券利回りの低下で運用環境が悪化。年金受給者のため、高いリターンを狙えるファンドに多額の資金を投じている。人員削減も顧みないファンドの裏に、労働者のマネーが連なる。
市場原理を徹底、非効率なものは効率的なものに置き換える米国流の「ファンド資本主義」。そうした厳しさも含めて自由市場を擁護してきたはずの共和党の保守派から批判が出たのが、もう1つの皮肉だ。
「ロムニーたたきではなく、共和党自身の内部分裂を招く劇薬だ」(アイオワ大学のキャリー・コビントン教授)。
…中略。
そのオバマ大統領でさえ、選挙資金では投資ファンドに頼る。
…後略。
(米州総局編集委員 藤田和明)

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