経済気象台 民意と官意…朝日新聞2月3日16面より
政党の公約やマニフェストは、言ってみれば製品のカタログである。政治家の書いた書籍や演説はその政治家のカタログだ。
民主党はマニフェストをことごとく覆し、その逆の増税路線を突き進んでいる。これは詐欺に近い。政党が処罰されないのは法的な不備に過ぎない。
野田首相は、野党時代に出版した書物で、特別会計の不透明さを糾弾し、このカラクリの解明後でなければ消費税は引き上げてはならないと明快に主張している。
だが、政権交代後、財務副大臣や財務相を務めた間の財務官僚による教育効果からか、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税引き上げに邁進している。有権者の感覚では、これはカタログに偽商品を掲げた詐欺行為であるが、首相はそれを大義と称している。
しかし、大義や正義などは、パスカルも言っているように、山脈を越えれば逆転することがよくある。特に政治の世界ではそうだ。
首相は、議員歳費や公務員給与のわずかな減額を提案しているが、まるで政官の薄皮を一枚切って国民の骨を砕くような話である。特別会計の闇や天下りや利権組織の温存など無駄遣いは膨張し続けている。
もとより、5%程度の消費税アップでは財政問題はとても解決しない。いったん増税路線を実現させた官僚たちは、更なる増税を仕掛けるだろう。
野田首相は同じ著書で、小泉首相の後の3代の首相は民意がないと主張している。民意なき2代目首相として、民意を問う総選挙を行う覚悟を持っているのかもしれない。しかし、その前に官意に従うことは、順番が逆である。
(匡廬)