偶然完全 勝新太郎伝 田崎健太〈著〉…2/5、朝日新聞・読書欄から。
講談社・1995円/たざき・けんた
68年生まれ。ノンフィクション作家。サッカー、野球などスポーツを中心に手がける。『CUBA ユーウツな楽園』『W杯に群がる男たち』『辺境遊記』など。
…前略。 文中黒字化は芥川。
衣装やセットが常に新品で感情表出もパターン化された日本のテレビドラマにうんざりしていた評者にとって、セリフもろくに聴き取れず暴力シーンもやけにリアルなこのドラマは画期的だった。こんな実験的な作品が平日21時から放映されていたのも、昭和という時代の混沌ゆえか。
勝は物語を脚本として構成せず、現場で即興的にせりふや場面を演出し、俳優の素の部分を取り込みながら、それを積み重ねていく手法を好んだ。それは従来にないリアルな質感を生み出したが、半面、制作進行は滞り、予算は超過しがちだった。結果、視聴率は低迷し番組は打ち切られてしまう。
…後略。
〈評〉斎藤 環 精神科医