「ビルマの独裁者 タンシュエ」ベネディクト・ロジャーズ著…日経新聞2月12日20面より

国家とリーダーの実態に迫る

世界で強権的な政治体制をとっている国家はいくつもあるが、国家の内情やリーダーの素顔が世界に知られていない国がいくつかある。その代表はミャンマーであり、昨年3月まで20年近く国家元首の地位にあったタン・シュエ旧国家平和発展評議会(SPDC)議長だろう。

昨年3月末にミャンマーは軍政から民政に移行し、新しいリーダーとしてテイン・セイン大統領が就任した。新大統領は民主化運動リーダーのアウン・サン・スー・チー氏との対話、同氏の議会補欠選挙への出馬容認、クリントン米国務長官訪問の受け入れなど民主化を進めており、「ミャンマーの春」との見方もある。

一方、タン・シュエ旧議長が依然、実権を握り、軍政温存のための表面的な民主化にすぎないとの観測も多い。本書は、あまりに情報の少ないミャンマーと現在の体制を築いたリーダーの実態に英国の人権活動家が迫ったもので、情報やエピソードなどに富んだ読み応えのあるものになっている。

タン・シュエ旧議長が個性の薄いイエスマンとして軍内で昇進し、権力をつかむまでの歴史、権力者としての残虐さ、少数民族や民主化運動への弾圧などがえぐり出されている。

この本でミャンマーの今後が読めるとは言い難いが、少なくとも今のミャンマーを知るには不可欠な本であることは間違いない。

秋元由紀訳。(白水社・28OO円)

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