大機小機 輸出は日本の命綱…日経新聞2月15日17面より

ニューデリーの中心地から車で30分、牛が散歩する荒地の中にこつぜんと現れる超近代的ビル群、グルガオン新産業区域だ。

ノキア、サムスン電子、ヒューレット・パッカード、レノボなどIT大企業、KPMG、デロイトなど世界有数の会計事務所、エクソンモービル、デュポン、べクテルなどの国際的超大企業が多数入居している。

昼食時には、ジーンズ姿の20~30代のインド人男女が、欧米人の専門家たちと流ちょうな英語で話しながら楽しそうに、しかも自信に満ちあふれて閑歩(かっぽ)している。

「スタバ」や「マック」に加えイタリアン、フレンチの高級レストランもあり、ニューデリーでも最も活気にあふれる場所だ。ブルドーザーがうなりをあげ、新しいビル群も建設途上だ。高速道路も鉄道もこの地域まで開通しているが、朝夕のラッシュ時は4車線の道路が6車線となり、クラクションが響汽車がひしめき合っている。

現在のインドの高成長とすさまじいエネルギーが渦巻いている。しかし、乱立する世界企業の巨大広告の中にも、ビルの入り口の掲示板にも日本企業の名はほとんどない。

インド在住の日本人はわずか4200人。総人口12億人のO・0004%に満たない。日本企業、日本人の存在感はきわめて希薄だ。インドの人口は、2030年までに16億人に達する。日本が新たに3つ以上誕生する計算だ。

日本が貿易収支の黒字を回復し、経常収支の黒字を維持し、世界に日本の存在感を再度示すためには、中国、インド、インドネシア、フィリピンなど中間層が急増し消費が急拡大するアジアの「人ロボーナス」国の需要を輸出や現地生産で取り込み、エネルギ-・資源国への輸出を徹底的に伸ばさねばならない。

1970年代前半まで日本は、食べていくために輸出が命綱で、貿易収支が赤字となれば引き締めに転じ、社会保障がはるかに希薄な下で、景気後退に耐えた。今後のエネルギーや食料の輸入急増を勘案すれば、輸出が命綱となる時代が再び遠からず来る。

国全体として危機感を持って輸出を奨励する時代に入ったといえよう。貿易収支の赤字、国債の累増、所得格差の急拡大、企業の引きこもり、製品のガラパゴス化、教育の質低下、政治の貧困、これらは全て、私たち国民一人ひとりの責任だ。(恵海)

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