活字が読める日本国民全員が一字一句読むべし特集。
いま、小沢一郎が考えていること…週刊ポスト3月2日号 文中黒字化は芥川。
「最後のご奉公です。文字通り『最後』です」
小沢一郎・民主党元代表は、本誌新春合併号のインタビューでそう語った。その最後の戦いの火ぶたがついに切って落とされた。増税、年金改悪、対米従属、大メディア癒着、そして霞が関支配ー野田政権の最低最悪の政治に堪忍袋の緒が切れた「壊し屋」が挑む決戦の秘策が、いま明らかになる。
「2月17日決起」の大号令
増税と小沢公判の奇妙な符合
党員資格停止で蟄居させられ、“疑惑の法廷”で被告席に座っていた小沢一郎・民主党元代表が、ついに動き出した。「大改革もしないで増税するのは、国民を愚弄する背信行為だ」
これまでほとんど出なかった大手メディア(共同通信)のインタビュー(2月4日)で消費増税への反対論を展開したのを皮切りに、ネット番組やBS放送に相次いで出演し、増税反対運動を強力に展開している。
2月9日には小沢グループ「新しい政策研究会」の会合に約100人を集め、2月10~13日には自ら塾長を務める「小沢一郎政治塾」を開催するなど、活動を本格化させた。
その理由は、足枷となってきた自身の政治資金規正法違反事件の公判が大きな転機を迎えたことだ。
公判では検察の捜査報告書にある元秘書・石川知裕・代議士の供述がでっちあげだったことが検事への証人尋問で明らかになった(※)。
※小沢氏の政治資金規正法違反事件の捜査の際、元秘書である石川知裕・代議士が「(虚偽記載を)小沢先生に報告し、了承も得ました」と供述したとの捜査報告書が作成されたが、石川氏が録音していた取り調べにはそのやり取りがなく、捏造されたものであることが発覚。取り調べを担当した検事は「記憶が混同した」と弁明した。
石川供述は、検察審査会が小沢氏を強制起訴と議決した際の有力な根拠とされたが、それが覆された。さらに検審の審理にあたって検察が小沢氏に有利になる捜査報告書を選別して隠し、提出していなかった事実も発覚している。
弁護側は「虚偽の捜査報告書を根拠にした議決は無効」として公訴棄却を要求している。
公判は裁判所が2月17日に問題の捜査報告書などの証拠採用の判断を下した後、3月9日に論告求刑、同19日に弁護側の最終弁論を経て結審し、4月中に判決が出される見通しだ。
だが、小沢氏は判決を待つつもりはない。側近のベテラン議員はこう語る。
「判決を待っていては消費増税のレールが敷かれてしまう。小沢さんは証拠採用の対応を見極めた後、小沢派120人に増税法案を阻止するための号令をかけ、増税派に政策論争を挑む覚悟を決めている」
一見無関係な小沢裁判と増税論は、水面下で表裏一体となって進められてきた。
増税派が最も恐れるのは野党でもマスコミでもなく、小沢氏だったからだ。
増税論が最初に浮上したのは10年の参院選前。
検察の強制捜査で小沢氏が幹事長を辞任し、「小沢排除」を掲げて財務大臣から首相に就任した菅直人氏が突然、消費税率の10%への引き上げを打ち出した。
参院選に敗北した菅首相に小沢氏が代表選で挑むと、なんとその投票日に検察審査会が強制起訴を議決して小沢氏の首相就任を阻止するというわかりやすい展開に。
やはり財務大臣から首相に上り詰めた野田佳彦氏は、いっそう増税にのめり込み、昨年10月から始まった公判で小沢氏が身動き取れない間に、党内で「一体改革素案」を決定した。
そしていま財務省を中心とした増税派は、なんとしても小沢判決前に増税を既定路線にしようとしている。
「たとえ罰金でも小沢氏が有罪になれば党内の増税反対派は総崩れになるが、有罪が無理なら判決前に増税路線を後戻りできないところまで進めなければならない」(野田側近議員)
野田首相がどう見ても勝算のない消費増税をゴリ押ししているのは、背後にいる財務省が小沢復権を恐れているからに他ならない。
それをよく知っている小沢氏は、「敵の嫌がることをせよ」の兵法通り、判決を待たずに勝負に動いた。
…以下、続く。