華厳経はインド文化圏において成立したものであるから、インド思想史やインド文化に対する深い理解がないと、正確に理解することはできない。

入法界品の英訳を何とかしないと死にきれぬ、といわれた鈴木大拙博士が「大乗思想の最高潮に達したもので、印度的表現形式の巧妙を極めたものを華厳経とする」（『東洋的一』）といわれたことは銘記すべきであろう。

さらに鈴木博士がインド、中国、日本の仏教の特質をとらえて、知性的、実践的、霊性的というようにのべられたが、インドの仏教は般若の知性によってうらうちされており、華厳経のなかにも般若は生きている。