なぜ自衛隊は軍隊ではないのか ― 憲法に明記されない最大の欺瞞

自衛隊は世界有数の通常戦力を持ちながら、憲法に存在が明記されていないという根本矛盾を抱えている。軍隊である現実を否定し続けることで生まれた違憲論争、用語の強引な言い換え、憲法9条の神学論争の不毛さを鋭く指摘し、自衛隊明記の必要性を訴える論考。

2017-02-24
以下は前章の続きである。

なぜ自衛隊は軍隊ではないのか。

もとより国の防衛を担う自衛隊の存在が、
そもそも憲法に明記されていないことに問題があろう。

戦闘機および哨戒機など航空機1008機、
ハイテク護衛艦など艦艇137隻、
戦車をはじめ装甲車1650両、
野戦砲および迫撃砲1550門に加えて、
総兵力約25万人を擁する自衛隊。

通常戦力では世界トップクラスの実力を誇る自衛隊は、
その法的位置づけはさておき、
外見上、誰が見ても「軍隊」であろう。

にもかかわらず、
これまで日本政府は自衛隊を軍隊とせず、
あくまでも専守防衛に徹した
「軍隊ではない実力組織」として、
その合憲性を主張してきたのである。

だが、その自衛隊の存在が憲法に明記されていないことは、
極めて大きな問題だ。

そのことによって、
自衛隊が違憲か合憲かなどという、
バカげた神学論争を生むからである。

したがって、
そんな不毛な神学論争に終止符を打つためにも、
一日も早く、
自衛隊の存在を憲法に明記すべきなのだ。

いずれにせよ、
自衛隊が軍隊ではないという建前であるため、
その用語も強引に言い換えられている。

たとえば「戦争」も、
いまでは「有事」「武力衝突」などと、
呼び換えられている。

なぜなら、
日本国憲法で「戦争」を放棄した以上、
軍隊ではない自衛隊が立ち向かう非常事態は、
「戦争」であってはならないからだ。

滑稽な話だが、
こうして日本国憲法第9条は、
本当に日本社会から「戦争」を一掃してしまったのである。

さらに自衛隊では、
「歩兵」を「普通科」、
「工兵」は「施設科」、
また「砲兵」には、
文字から類推できない「特科」という名称が与えられている。

自衛隊が軍隊でないことをアピールするため、
古来の軍事用語から旧軍を連想させる用語を一掃し、
あらゆる名称から、
「軍」「兵」「戦」の文字を、
ことごとくつまみ出したのだった。

それはまさに、
中世欧州における宗教裁判の魔女狩りの如きである。

師団・連隊・中隊・飛行隊・航空隊・艦隊など、
組織の名称はどうにか粛清を免れているが、
こうした用語が自衛隊に残っていることに、
抵抗感を覚える人など、
ほとんどいまい。

むしろ、
歩兵を普通科、
砲兵を特科などと、
無理やり呼び換えていることの方が、
不自然であり、
強い違和感を覚える。

ともかくそれらは、
軍隊のイメージを払拭せんがための、
当時の日本政府の苦肉の策だったのだろう。

だが、そもそも、
国家・国民を守る武装組織が、
「自衛隊」という名称であれば許される一方で、
「軍隊」を名乗ることが許されないというのは、
どう考えてもおかしい。

この稿、続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください