漢族の「蓄鉄」思想とAIIB ― 鉄と技術をめぐる中共の本音

李克強首相の「日中経済の相互補完」発言の裏にある中共政権の本音を、「蓄鉄」という漢族の歴史的蓄財思想、粗鋼過剰生産、AIIB設立の真の目的、軍事技術との直結という視点から読み解き、中国の冊封体制的価値観を鋭く告発する論考。

2017-02-24
以下は前章の続きである。
「中日経済関係には非常に大きな相互補完性がある。日本は多くの分野、とりわけ技術において先進的で、先進的な管理システムがある。中国はそれらを求めている」と李克強首相は述べた。
そして「経済関係には相互補完性がある」と言った直後に、「先進的技術を中国は求めている」と本音をのぞかせた。
ここに中共側の深刻な課題が垣間見える。
毎年6億トン以上も生産される「鉄」が累積され、中共政権支配地域にあふれている。
古来、漢族は「鉄」を積み上げて財としてきた。
今もその伝統は生きていて、地方政府も含めて蓄財ならぬ「蓄鉄」が常態化している。
「日本の技術と中国の市場がしっかりと結びつけば、非常に大きなエネルギーを引き出すことができると思う」と、李克強首相は日本の技術へのこだわりを見せる。
この場合の技術の第一は、「鉄」の質を向上させる技術であろう。
それは軍事技術の向上に直結する。
今の中共政権下の「鉄」では、作れない兵器が多すぎるのだ。
この後、李克強首相はAIIB(アジアインフラ投資銀行)について、「国際金融危機が勃発して以来、既存の国際金融システムに欠陥が現れた。
中国はG20および他国と努力して、既存の国際金融システムを改革し、それをさらに完全なものにし、公平、合理的でバランスの取れる方向で発展させていきたい」と説明する。
ある意味で、李克強首相の説明は正直である。
すでにAIIBが、中共政権下で余剰に生産されている鉄(粗鋼)を、インフラ整備支援をお題目にしてばらまくために設立された、という見方は広がっているからだ。
中共政権下での粗鋼生産量は7億トンを超え世界一(2013年)であり、2位の日本の7倍、3位の米国の9倍に達している。
漢族のいう「カネ」は、歴史的には「鉄」を指すのだ。
「バランスの取れる方向」とは、その「鉄」を出すから代金を払え、ということに他ならない。
代金の「カネ」は、先進資本主義諸国の「カネ」、ドルとユーロであろうか。
ドルとユーロには技術が付いてくる。
李克強首相の言動は徹頭徹尾、価値判断の基準は漢族の中共政権にありとするものであり、歴史的な冊封体制的価値観そのものだ。

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