進化論否定発言が映し出す米国の中世的宗教観 ― 創世記が正しいと語る「博士」

米国社会には、いまだ中世的宗教観が深く根を張っている。中絶医が射殺される事件が頻発する現実に加え、テレビ神奈川では「ダーウィンの進化論は誤りで、創世記の方が正しい」と語る東大卒博士が登場した。創世記に記される人類観と人種差別思想の歴史的根源を照射し、欧米社会に潜む根深い偏見の構造を問う論考。

以下は前章の続きである。

アメリカというイメージからは想像もできない中世的な宗教観が、米国社会には深く根差しているのである。
例えば、堕胎は神の教えに背くとするプロライフ派が、毎年のように中絶医を射殺する事件が起きているのも、その表れの一つであろう。

米国も大変だと思っていた矢先、先日、テレビ神奈川で信じられない番組を見た。

東大を出て、米国でも学んだという安藤和子博士なる人物が登場し、
ダーウィンの進化論は間違いだらけで、『旧約聖書』冒頭の創世記の記述の方がまともだ、
などという比較話を平然としているではないか。

つまり、万物はすべて創造主が創った、
猿は猿として創り、六日目に神は自分に似せてヒトをお創りになった、
あの話の方が、ダーウィンよりも妥当性が高いと言うのである。

では彼女は、その創世記に、人類がどのように描かれているかを知っているのだろうか。

そこに登場するのは、
アラブやユダヤの始祖となるセム、
エジプト人などの祖先ハム、
それに白人の祖ヤペテだけである。

黒人も、アジア系モンゴロイドも出てこない。

いや、東方の三聖人の一人は黒人であったという説もあるが、
いずれにせよ、モンゴロイドは登場しない。

神は、メキシコ人も、日本人も、創っていないのである。

だからこそ彼らは、黒人もインディオも人間ではないと信じて、殺しまくったのである。

少なくともモンテスキューは、公然と、
「黒人は人間ではない」と『法の精神』の中に書いている。

この稿、続く。

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