規制という名の停滞――原子力研究と放射線医療を止める不作為の罪
規制委の場当たり的な要求が、原子力研究と放射線医療の進展を阻害している。
大学研究炉の停止は教育と研究を停滞させ、日本はかつて教える側だった立場から、学ばせてもらう側へと転落した。
この現状は日本のみならず、人類全体にとっての不幸である。
以下は前章の続きである。
2016-01-05
これまでの取材で、審査のたびに規制委が新しい要求を出す事例を、私は幾つも見てきた。
規制委は、実習しながら規制について学んでいるのかと、問いたくなるほどである。
彼らが原子力研究を左右し、放射線医療の進展までも止めている現状は、日本のみならず人類にとっての不幸である。
影響は、癌治療だけに留まらない。
研究も教育も停滞している。
大学の研究用原子炉が停止したことで、学生たちは学ぶ場を失った。
近畿大学は、窮余の策として学生たちを韓国・水原に送り、慶熙大学の試験研究炉で学ばせている。
かつて日本は、慶熙大学をはじめ、ソウル国立大学など韓国六大学の精鋭学生約二十人を毎年、京都大学原子炉実験所に迎え、教育していた国である。
現在のこの立場の逆転を、宇根綺氏ならずとも「情けない」と思うのは当然であろう。
あらゆる研究分野で、先駆者としての地位を守り続けることこそが国益であり、日本人の幸せである。
政府は、規制委の的外れな規制を正し、彼らが正しく機能するよう専門家会議を設置しなければならない。
そして、医療や研究が完全停止という罠に陥ることがないよう、国会の監視機能を強化しなければならないのである。