規制委が止めた癌治療――産経フロントが告発した国家的損失
原子力規制委員会の不合理な審査によって、京都大学原子炉実験所の世界最先端研究とBNCT癌治療が停止に追い込まれている。
年間数十人を救えた命が失われ続ける現実は、科学と医療への重大な背信である。
以下は今日の産経新聞のフロントページからである。
2016-01-04
「規制委が止めた癌治療」筆者、櫻井よしこ。
原子力規制委員会の不合理な審査によって、日本が誇る世界最先端の研究が停止に追い込まれている。
年間数十人規模で助けることができた命が、二年間も犠牲にされ続けるという、許し難い事態が発生している。
京都大学原子炉実験所は、原子炉による実験および関連研究の拠点として、昭和三十八年に開設された。
以来、ここを舞台に全国の大学研究者が最先端の研究を進めてきた。
二つの原子炉をはじめ、各種加速器施設、大強度ガンマ線照射装置などを備える、日本最大規模の統合的核エネルギー・放射線関連教育・実験施設である。
世界が注目する京都大学の研究の核は、中性子を使った基礎研究だ。
それが、規制委という壁の前で、完全に中止された状態が続いている。
中性子は、物質の構造を比類なく正確に探るために不可欠である。
惑星探査機はやぶさが持ち帰った小惑星イトカワのサンプルに含まれる微量元素の成分も、中性子を当てることで分析できた。
京都大学が中性子を活用して行ってきた研究の一つが、「ホウ素中性子捕捉療法」、すなわちBNCTという癌治療である。
一九九〇年以降、京都大学のBNCTの臨床研究は五百例以上に及び、症例数と適用範囲の広さにおいて世界最高水準にある。
原子炉実験所・原子力基礎工学研究部門の宇根崎博信教授は、京都大学が社会貢献として最重視してきたのが癌治療としてのBNCTであり、研究と並行して週一日を治療に充て、近年は年間四十人から五十人の命を救ってきたと指摘する。
この稿続く。