「爆買い」の裏側にある中国消費の矛盾

中国の「爆買い」現象を手がかりに、中国政府が政治分野を除いて自国の弱点と矛盾を率直に認めている実態を検証する。
ブランド力不足、偽物の横行、信用の欠如という構造問題が、国内消費拡大を阻む現実を浮き彫りにする。

2016-02-03
以下は1月31日の日経新聞に掲載された記事である。
中国の春節連休を前に日本の観光業界は中国人の爆買いに期待を寄せている。
だが中国政府関係者の表情は明るくない。
消費の一部が海外に流出しているからである。
中国政府は海外から消費を取り戻せと号令をかけている。
しかし実現は容易ではない。
工業情報化省の馮飛次官は国外製品と国産品の最大の差はブランド力だと述べた。
日本製と中国製の炊飯器で炊いたご飯の味に差がないという調査も紹介された。
調査としては粗雑だが政府高官がブランド力で劣ると認めた点は注目に値する。
次官は先進国では偽物が少なく安心して消費できるとも語った。
これは中国の信用力欠如を率直に認めた発言である。
ネット通販は急成長しているが偽物に侵食されている。
調査では品質に問題がなく偽物でもない商品の比率は58.7%にすぎなかった。
この状況で国内消費を促すのは無理がある。
新興企業でさえ模造品に悩まされている。
これが爆買いの背景にある中国消費の実態である。
政治分野を除くと中国政府は自国の矛盾を意外なほど率直に表明する。
過剰設備や環境悪化や食品汚染も問題として指摘されてきた。
だがこれらは構造的に根深く簡単には解決できない。
それこそが安定成長への大きな障害となっている。

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