米議会は尖閣のために戦争しない — 安保第五条の限界と自主防衛の現実 —
米国憲法と戦争権限法の構造から、尖閣防衛において米国議会が軍事行動を承認しない現実を明らかにする。伊藤貫氏と矢野義昭氏の対談を通じ、日米同盟の限界と日本の自主防衛の不可避性を論じる。
2017-03-13
以下は前章の続きである。
尖閣出動に必要な議会の承認
伊藤
米国憲法や戦争権限法を読むと、戦争をするかしないかの最終決断は議会がする、と定められています。
議会が戦争したくないといえば、大統領は従わなければならない。
だから数年前、オバマ大統領がシリアを爆撃したいと議会に承認を求めた時、民主党も共和党もシリアで戦争したくない」という意見が多数で実現しなかった。
米議会の外交委員会のスタッフと話をすると、民主・共和の違いなく、「議員たちは尖閣のために中国と戦争するつもりはない」と言います。
国務省の東アジア担当・元次官補で、日本にも七年間勤務したことがあるトマス・ハバードは、「Don‘t expect us to go to a war over this senkaku issue」(尖閣問題のために、中国とアメリカが戦争するなんて期待するなよ)と明言しています。
自民党は野党時代に、「政権をとり返したら、尖閣に防衛施設を建設する。自衛隊員を常駐させて、尖閣を守る」と言っていました。
でも政権をとり返した後は、何もやらない。
何故、日本の地対艦ミサイル・地対空ミサイルを尖閣に配備しないのか?
その理由は、米国務省とホワイトハウスが、「日本の警官と自衛隊を尖閣に上陸させるな、防衛施設を造るな」と命令してきたからだそうです。
要するに、徹頭徹尾、米国は巻き込まれたくないのです。
勿論、彼らは口先では「安保第五条が適用されるから、日本は大丈夫だ」なんて言いますけど。
矢野
たとえ同盟国であっても自国の国益にはならない第三国との領土問題で紛争に巻き込まれることはしない。
それは米国でもどこの国でも同じです。
フォークランド紛争の時もそうでした。
米英の間でさえアメリカは間接支援はするものの直接的には戦わなかった。
英軍は空母を派遣してなんとか島を取り返した。
だから尖閣防衛でアメリカが動くわけがない。
日本は自力で守らなければなりません。