「軍の関与」とは何だったのか――事実に基づく反論を放棄してきた日本外交

日韓慰安婦合意で認められた「軍の関与」とは何か。安倍首相自身の国会答弁が示す事実と、日本政府が国際社会で事実反論を怠ってきた致命的欠陥を検証する。

2016-02-21

今回、対韓歴史外交では珍しく、日本側からも要求を出した。
「最終的かつ不可逆的に解決したこと」を韓国側が明言することと、日本大使館前の慰安婦像の撤去の二点を、合意の条件として提示したのである。
これまでは韓国側の一方的な要求に対し、日本側が国際法上の立場を崩さぬようにしつつ、足して二で割るような譲歩を重ねるのが常だった。
その点において、安倍外交は新鮮であった。
しかし、慰安婦問題の本質である虚偽への挑戦を回避し、外交的妥協を選んだため、今回の合意は極めて不安定なものとなった。
さらに、国連を含む国際社会で相互批判を自制する条項が盛り込まれたことで、事実に反する反日宣伝への反論は、より困難になりかねない。
これは重大な禍根を残す。
自民党は2014年一月の総選挙において、虚偽に基づく非難には断固反論し、日本の名誉と国益を回復すると公約していた。
安倍首相は2016年1月18日の参議院予算委員会で、性奴隷二十万人などの主張は事実ではないと明確に述べた。
合意で認めた軍の関与とは、衛生管理を含めた管理と設置に過ぎないとも明言した。
日韓請求権協定で問題は解決済みであり、戦争犯罪を認めたわけではないとも断言した。
岸田外相も「性奴隷」という表現は不適切であり、海外メディアに申し入れていると答弁した。
しかし、これらの正論を国際社会に伝える体制は、決定的に不足している。
外務省はいまだに、吉田清治証言が虚偽であることすら積極的に発信していない。
事実に基づく反論を控えてきた政府の姿勢を改め、国際広報の再建を真剣に検討すべき段階に来ているのである。

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