数字が暴くテレビ報道の異常――「偏向」を超えた全体主義

小川榮太郎の実証的分析を通じ、特定秘密保護法と安保法制をめぐるテレビ報道が、もはや「偏向報道」の域を超え、事実上の政治プロパガンダと化している現状を明らかにする。数字が示す異常な賛否比率が、日本のテレビ報道の構造的腐敗を暴き出す。

2016-03-01
以下は先般、月刊誌「正論」で、吉永小百合についての見事な論文を発表した小川榮太郎氏が月刊誌「WiLL」4月号に発表している論文からである。

私がTBSのニュース23とテレビ朝日の報道ステーションの酷さについて言及して来た事が完璧に正しかった事を、彼は、数字的に、物理的に証明していた。

題字以外の文中強調は私。

違法報道を許さない! 小川榮太郎

TBSの「社会的不適格性」

テレビによる全体主義

まずは、次ページの円グラフをご覧いただきたい。

上段は特定秘密保護法の、下段は安全保障関連法成立の際の、主要なテレビ報道番組の法案に対する賛否バランスを、放送時間によって調査したものだ。
調査は、私が代表理事を務める社団法人日本平和学研究所が行い、ナレーション、キャスター、コメンテーターの発言、各種インタビューなど、法案へのコメントを賛成、反対、中立の観点で分類して、秒単位で時間を計測した。

ご覧いただければ一目瞭然、各局ともに賛否比率に極端な偏向が見られる。

特に最も長時間、これらのテーマを扱っているTBSの「NEWS23」、テレビ朝日の「報道ステーション」は、特定秘密保護法時で80%以上、安保法制時には90%以上を反対意見に割くという異常さである。
さらに信じ難いのは、全放送局を加算した場合の数値だ。

特定秘密保護法時で賛成:反対が26:74、安保法制時では実に11:89となるのである。

局数が複数あろうとも、これでは事実上、テレビによる全体主義ではないか。

逆を想像してみればいい。

どの局の報道番組を見ても安倍政権賛美ばかりが垂れ流されていたら、リべラルや左翼は狂気のように「民主主義の死」を絶叫し続けるに違いない。

いや、はっきり言っておこう。

私も、たとえ自分の立場に近い言説だろうと、テレビが翼賛会のようにそれへの賛美一色というような気持ちの悪い国に住むのは御免である。

この病的な賛否バランスは、テレビ業界人やリベラル左派の人たちに、驚くほど不公正さへの痛覚が欠如していることを明かしている。

が、無論、一般視聴者の多くは、特定の色のついた政治ショーを見たくて夜のニュース番組を見るわけではあるまい。
自宅で、あるいは酒場で寛ぎながらその日の出来事を振り返り、時に自分なりの感想を差し挟んだり、家族や同僚と議論するために番組を見るのだろう。
「朝まで生テレビ」や「たかじんのそこまで言って委員会NP」などは、視聴者は司会者のキャラクターや出演者の過激な発言、番組の政治的偏向そのものを楽しんだり、野次りたくて見る人も多く、それがこれらの番組の社会的な役割とも言える。

が、報道番組は政治バラエティーではない。
国論を二分し、また国家の命運を真に左右する重大な安全保障上のテーマで、全テレビ局が、報道の名のもとに一色に染まった政治プロパガンダを垂れ流し続けていいかどうかは、本来、わざわざ論じるまでもない話であるはずだ。

数字が示す現状は、「偏向報道」という事態を遙かに通り越している。

この稿続く。

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