電力自由化が招く独占強化 — ドイツの失敗に学ぶ現実 —
電力自由化と発送電分離を行っても、多様な送電業者が生まれる保証はない。
送電事業は設備投資負担が重く利幅が薄いため、新規参入は限定される。
実際にドイツでは自由化の結果、競争ではなく独占が強化された。
日本でも同様に、発電・送電の両部門で寡占化が進む可能性が高い。
2016-03-24
以下は前章の続きである。
よく勘違いされているようなのですが、電力自由化して発送電分離した結果、必ずしも多彩な送電業者が生まれる保証はないのです。
送電業は、巨額な設備投資による減価償却圧力や、日常的な保守点検にコストがかさむわりに、利が薄い地味な部門だからです。
現在わが国の9電力会社は、どこも動かない原発の維持費と原油高がのしかかって青息吐息です。
この経営状況の中で安易に電力市場の開放をすると、経営体力がある大規模電力会社がスケールメリットを目指してこの際とばかりに、弱小電力会社の発電シェアを奪いにかかります。
これは現実にドイツの電力自由化で起きたことです。
一方、送電部門への新規参入も限られたものになるでしょう。
東京、大阪などの大都市周辺部以外では、地形が厳しいわりに送電所帯が少ないので、メリットがないからです。
したがって、大都市周辺は送電−販売の激戦区、地方は買い手がつかない、ということになります。
このような非対称を調整するために一県単位での買い取りしかないと私は思いますが、そうなるかは分かりません。
たぶん既存の電力会社が、そのまま他社系列の送電網を買い取ることが主流となるのではないでしょうか。
技術的にも、人材的にもズブの素人が参入出来ることではないからです。
結果、ドイツは独占が強化されてしまいました。
わが国も電力の自由化により、発電会社は9社体制から4、5社体制に独占強化され、送電部門も同じような独占強化がされてしまう可能性が高いと思います。