他国の謀略が日常である現実 — 危機感を欠いた社会への警鐘 —
諜報の現場では、他国による謀略や工作、介入は日常的な出来事である。
その現実を前に、危機感の薄い日本社会の在り方は空恐ろしい。
世論調査が示す国民意識と乖離する野党共闘の問題点を指摘する。
2016-03-27
以下は前章の続きである。
佐々淳行氏の最新著『私を通りすぎたスパイたち』には、実父の政治学者・弘雄氏と、ソ連のスパイとして処刑された尾崎秀実氏との「友情」から、米国で受けたスパイ摘発の訓練まで、さまざまな体験が生々しく描かれている。
他国の謀略茶飯事。
外務省研修所で外務官僚らに「美女が近づいてきても、舞い上がってはいけない」と講義し、「ハニートラップ」に注意喚起したエピソードや、ソ連のスパイ事件をめぐり、現共産党幹部の親族が自首してきた話など、てんこ盛りの内容だ。
そして同時に、治安当局にとって他国の謀略や工作・介入が珍しくもない茶飯事であるのが実感でき、危機感の薄い日本社会のあり方が空恐ろしくなる。
ただ、いずれにしても、共産党の狙いや本音がどうであれ、安全保障関連法の廃止を結集軸とする野党共闘は、筋が悪いと考える。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、安保関連法を「必要」と考える人の割合は、同法成立後から増え続け、直近の19、20両日の調査では57.4%に上った。
先月の共同通信の調査でも、「廃止すべきでない」(47.0%)が「廃止すべきだ」(38.1%)をはっきり上回っている。
民主党の岡田克也代表はこれまで「(法案に反対する)国民の声を聴いていない」と政府を批判してきたが、周回遅れで国民意識についていけていない。
この問題は、もはや「勝負あった」のではないか。
(論説委員兼政治部編集委員)