本社移転という選択――スプリント買収を起点に見えた税務戦略の本音
スプリント買収をきっかけに判明した、ソフトバンクグループの英国本社移転検討。法人税率、国際投資の利便性、欧米企業の租税回避手法を俯瞰し、日本企業が直面する評価リスクと政策環境を整理する。
2016-04-02
以下は https://zuuonline.com/archives/93815 から。
昨夜、ふとしたことで、スプリントの買収について検索していて発見したものである。
ソフトバンクグループ株式会社が、本社の英国移転を検討していたと、国内の大手新聞紙で報じられていた。
これは二〇一五年十月に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が一度報じた内容について、国内新聞社が自ら確認が取れたとして、改めて報じたものである。
楽天などで社内の共通語を英語にするなど、日本企業のグローバル展開に向けた動きは存在するが、海外への本社移転を検討した日本企業は極めて珍しい。
なぜこのような検討が行われたのかを、世界の流れとともに見ていく。
なぜ英国への本社移転を検討したのか。
ソフトバンクグループ株式会社は、ソフトバンクのグループ全体を統括する持株会社である。
移転理由は主に二つあると言われている。
一つ目は法人税率を抑えることである。
日本の法人税率は当時約三二パーセントであったが、英国では約二〇パーセントである。
日本から英国へ本社を移転した場合、法人税率が約十ポイント引き下げられる計算になる。
税金もコストの一つと考えれば、この差は極めて大きい。
もう一つは国際的な投資に対する利便性である。
当時、ソフトバンクグループは、インドのIT企業やソーラー発電に対して大規模な投資を行っていた。
インドはかつて大英帝国の一部であり、英国はその旧宗主国である。
日本企業としてよりも、英国企業としてインドと向き合った方が有利ではないかと検討されたのである。
しかし最終的には、本社を移転しても日本の税務当局の判断に大きく左右される可能性が高く、法人税節税の実効性が不明確であること、
またインド等への投資から収益が本格化するのはまだ先であるとして、近々での本社移転は時期尚早と判断され、断念したと言われている。
日本では、法人税減税を目的として海外へ本社を移転する例は極めて少ない。
しかし欧米系、特にグローバル企業では一般的である。
スターバックスは、スイスやオランダの関連会社を用いて仕入れ価格やブランド使用料を操作し、意図的に赤字を作り法人税を圧縮していた。
アップルは、いわゆる「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれる手法を使い、アイルランドに利益を集約し、実質的に法人税を回避していた。
税務戦略によって税負担を減らすことは、投資家から見れば経営努力の一指標である。
しかし国家や国民の立場からすれば、自国で事業を行いながら税を納めない姿勢には強い批判が生じる。
インフラや行政サービスの恩恵を受けている事実は否定できないからである。
今回のソフトバンクグループの件でも、国民や行政の理解を得にくいことが、断念理由の一つであったとされる。
行政との関係性、国内携帯事業におけるレピュテーションリスクを考慮し、
最終的に、移転しないという判断が下されたと考えられる。
ただし理由が「時期尚早」である以上、環境とタイミングが整えば、再び検討される可能性がある。