見せかけのモラリストを打ち破る現実認識――アジア最大の危機は日中関係である
2016年9月、ニューズウィーク誌に掲載されたケリー・ブラウン教授の論文は、朝日新聞や同調する文化人が語ってきた「見せかけのモラル」とは正反対に、アジアにおける最大の危機が日中関係にあるという歴史的現実を冷静に指摘している。感情論ではなく、1500年に及ぶ歴史的構造から日中対立を捉えた、正鵠を射た論説である。
2016-09-08
以下は9/13号のニユーズウィーク誌の10ページに、「アジアが抱える最大の危機 それは日中関係」と題して掲載されたケリー・ブラウン(ロンドン大学キングズ・カレッジ教授)の論文からである。
前章の櫻井さんの論説が、朝日新聞社とこれに同調しているいわゆる文化人たちの国を誤らせ矮小化し続けて来た見せかけのモラリスト達の論説とは正反対に在る現実に対して、正鵠を射た論説であることを証明している。
アジアが抱える最大の危機 それは日中関係
今のアジアで最も憂慮される国家関係はどれか。
武力紛争の可能性が最も高いのはどこか。
核開発を進める北朝鮮か。
緊張の続くパキスタンとインドか。
南シナ海での中国と周辺諸国との衝突か。
その延長線上にある米中直接対決か。
どれも由々しき問題であることは間違いない。
だが歴史を振り返れば、アジアで最も危ない関係を、最も長く続けているのは中国と日本だ。
日中関係は複雑を極めるが、問題を煮詰めれば一つの問いに集約できる。
これまで何かと言えば言い争ってきた両国は、それぞれが世界の強国となった今も、衝突せずにいられるのか。
歴史をたどれば、決してそうはいかない。
マイアミ大学のジューン・ドライヤー教授が日中関係史を綴った新著『中華帝国と日の昇る帝国』によれば、地域支配をめぐる日中の争いの歴史は1500年前にさかのぼる。
当初、双方は尊大な姿勢で相手国に臨んだという。
中国側が日本を属国のように扱おうとすれば、日本側も相手を侮蔑した。
ただし、本格的に衝突するようになったのは、19世紀後半に日本が急速に近代化してからだ。
1895年の日清戦争、1905年の日露戦争での勝利は、第1次世界大戦で地域をのみ込むナショナリズムの前奏曲となった。
日中関係史には一定のパターンがある。
温かい関係と冷たい関係の時期が交互に訪れるのだ。
温かな時期の代表は、日中国交正常化が成し遂げられた1970年代から80年代にかけてである。
90年代と2000年代半ばにも、短いながら良好な時代があった。
しかし、ここ10年近くはずっと冷え込んでいる。
この稿続く。