国内の問題から民衆の目をそらし、外に向けさせる――南シナ海と官製動員の構図
南シナ海仲裁裁定後、中国の官製メディアは外国排斥感情を煽った。
その背後には、国内経済の低迷や外交環境の悪化という失政から民衆の関心を逸らす、指導部の意図が見える。
反仏・反日デモに見られる動員の手法は、文化大革命期の価値観と連続している。
2016-09-11
以下は前章の続きである。
南シナ海 毛沢東時代に重なる排斥。
仲裁裁の裁定を受けて外国排斥感情をあおったのは中国の官製メディアだが、背後には「国内の問題から民衆の目をそらし、外に向けさせる」という習近平指導部の思惑がほの見える。
北京の改革派知識人は「国内の経済は低迷し、外交環境も悪化している。一連の政策の失敗を、中国を封じ込めようとする米国などの陰謀のせいにしようとしている」と分析した。
中国では共産党政権を批判するデモは厳しく弾圧されるが、抗議の相手が外国であれば黙認される場合が多い。
ときには当局によって動員されるデモもある。
2008年に北京五輪の聖火リレーがパリで妨害された事件を受けて起きた反仏デモや、12年の日本政府による尖閣諸島国有化に抗議する反日デモは、その代表例だといわれる。
文革初期の中国は米ソ二大国と同時に対立し、ほとんどの周辺国とも犬猿の仲となった。
習近平政権の外交のやり方をめぐり、「毛沢東の時代を思い出す」との声も上がっている。
文化大革命で根付いた価値観は、中国の指導層から庶民に至るまで染みついている。
第3部ではこの夏の動きなど最新の事象から「爪痕」の深さを描く。
(敬称略)