南京事件登録の真意――外交武器として利用される「記憶」の政治

中国が南京事件を世界記憶遺産に登録しようとした動きは、歴史保存ではなく日本に対する外交武器化であった。
ユネスコの審査過程、習近平の国際発言、ホロコーストとの並列化の意図を通じて、その政治的狙いが明確に浮かび上がる。

2016-10-09
以下は前章の続きである。
しかし民間では限界がある。
一方、中国はどうか。
一年ほど前、中国は南京虐殺記念館を世界文化遺産にと言いだし、条件をクリアするため記念館を三倍に拡張したことがあった。
このときは認められなかったが、昨年、十二月十三日を国家記念日に格上げし、あらためて力を入れていることが明らかになった。
ユネスコが申請を認めるかどうかは、登録小委員会が史料を検討してある程度の評価をし、十四人からなる国際諮問委員会に送る。
国際諮問委員会が最終審議を行い、決定はユネスコ事務局長に委ねられる。
昨年三月、習近平主席はイリナ・ボコバ事務局長に会っている。
四月、ドイツを訪れた習近平は講演を行い三十万虐殺に言及した。
世界記憶遺産にはすでにアンネの日記が登録されており、ドイツで言及したというのは、南京事件をホロコーストと並べる意図があったからだろう。
同じ四月、デンマーク女王を南京虐殺記念館に案内している。
登録することによって、日本に対する外交武器として強めようとしていたのがはっきり見てとれていた。
このように、日中の取り組み方には格段の違いがある。
果敢に問い質した日本人たち
では習近平が南京事件を信じているかといえば、そうではない。
習近平は、中学校でも、清華大学でも、南京事件を学んだことがない。
中国が教科書に載せるのは昭和五十六年、習近平が二十八歳になった時だ。
二十八歳のとき突然教科書に現れた南京事件を信じてはいまい。
習近平がなかったと考える理由の第二は、共産党員が学ばなければならない党史、たとえば胡喬木の『中国共産党の三十年』は事件を記述していない。
党史にないことを習近平は事実と見なすか。
第三は、中国の高官たちが事件をなかったと見なしてきたことだ。
習近平だけがあったと見なすことは考えられない。

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