反軍主義者。核の狂信的愛好者ではない。でも本当の話、核保有問題は緊急を要する。
エマニュエル・トッドと朝日新聞論説主幹・若宮啓文の対談後半。
核拡散、米国の攻撃性、イラン問題、日本の国益をめぐる議論を通じ、反軍主義者であるトッド自身が「核保有問題の緊急性」を明言する場面を記録する。
反軍主義者。
核の狂信的愛好者ではない。
でも本当の話、核保有問題は緊急を要する。
2016-10-31
以下は前章の続きである。
文中強調は私。
若宮
EU(欧州連合)のような枠組みがないアジアや中東ではどうでしょう。
さらに拡散し、ハプニングや流出による核使用の危険性が増えます。
国際テロ組織に渡ったら均衡どころではない。
トッド
核拡散が本当に怖いなら、まず米国を落ち着かせないと。
日本など世界の多くの人々は米国を「好戦的な国」と考えたくない。
フランス政府も昨年はイランの核疑惑を深刻に見て、米国に従うそぶりを見せた。
でも米国と申し合わせたイスラエルのレバノン侵攻でまた一変しました。
米国は欧州の同盟国をイランとの敵対に引き込もうとしている。
欧州と同様に石油を中東に依存する日本も大変ですが、国益に反してまで米国についていきますか。
若宮
日本のイランへの石油依存度は相当だし、歴史的な関係も深い。
イラクの始末もついていないのにイランと戦争を始めたらどうなるか。
イラクのときのように戦争支持とはいかないでしょう。
トッド
きょう一番のニュースだ(笑い)。
北朝鮮と違い、イスラム革命を抜け出たイランは日本と並んで古い非西洋文明を代表する国。
民主主義とは言えないが、討論の伝統もある。
選挙はずっと実施されており、多元主義も根づいている。
あの大統領の狂信的なイメージは本質的な問題ではない。
若宮
イラン・イラク戦争のとき日本は双方と対話を保ち、パイプ役で努力した。
その主役は安倍首相の父、安倍晋太郎外相でした。
トッド
私は中道左派で、満足に兵役も務めなかった反軍主義者。
核の狂信的愛好者ではない。
でも本当の話、核保有問題は緊急を要する。
若宮
核均衡が成り立つのは、核を使ったらおしまいだから。
人類史上で原爆投下の例は日本にしかなく、その悲惨さを伝える責務がある。
仮に核を勧められても持たないという「不思議な国」が一つくらいあってもいい。
トッド
その考え方は興味深いが、核攻撃を受けた国が核を保有すれば、核についての本格論議が始まる。
大きな転機となります。
この稿続く。