ロシアは日本の戦略的重要性を完全に理解している。国際政治において強国は常に均衡を求める
エマニュエル・トッドと朝日新聞論説主幹・若宮啓文による日ロ関係論。
北方領土問題を感情論や国内ナショナリズムから切り離し、「強国は常に均衡を求める」という国際政治の原理から再定義する対話。
ロシアは日本の戦略的重要性を完全に理解している。
国際政治において強国は常に均衡を求める。
2016-10-31
以下は前章の続きである。
見出し以外の文中強調は私。
●トッド「北方領土問題、高い視点から」
若宮
ところでトッドさんはロシアを重視し、日ロ関係を良くすれば米国や中国への牽制になると書いてます。
トッド
私はずっとそう言ってきた。
ロシアは日本の戦略的重要性を完全に理解している。
国際政治において強国は常に均衡を求める。
若宮
でも、日ソ国交回復から50年たっても北方領土問題が片づかず、戦略的な関係を築けません。
トッド
ロシアは1905年の敗北を忘れず、日本は第2次大戦末期のソ連参戦を許していない。
でも仏独は互いに殺し合ってきたのに、現在の関係は素晴らしい。
独ロや日米の関係もそうです。
日ロもそうなれるはずだ。
若宮
日本は北方四島を全部還せと言い、ロシアは二つならばと譲らない。
トッド
では、三つで手を打ったらどうか(笑い)。
若宮
そう簡単にはいきませんが、互いに発想転換も必要ですね。
ロシアは中国との国境紛争を「五分五分」の妥協で片づけました。
トッド
解決のカギは仲良くしたいという意思があるかどうかです。
北仏ノルマンディー沖にも英国がフランスから分捕った島があるが、問題になっていない。
地中海にあるフランスのコルシカ島は元々イタリアだったが、誰も返せとは言わない。
若宮
日本と韓国の間にはもっと小さな島があり……。
トッド
それこそ「偽りのナショナリズム」。
国益の本質とは大して関係ないでしょう。
この種の紛争解決にはお互いがより高い視点に立つこと。
つまり共同のプロジェクトを立ち上げる。
北方領土でも何かやればいい。
若宮
トッドさんが平和主義者だということが分かりました(笑い)。