信頼は外交で築かれた ― 安倍政権がオバマ広島訪問へ至るまで
自由・人権・法の支配を軸にした外交実績と、高い内閣支持率を維持した内政基盤によって、安倍首相は日米同盟を戦略的に強化し、オバマ大統領の広島訪問を実現させた。その過程と国際政治の力学を描く論考。
外交面での実績の積み重ねと、内政における高い内閣支持率の維持という強い政権基盤を示したことで。
2016-11-23.
以下は前章の続きである。
国際会議や各国首脳との個別会談などあらゆる機会を通じ、自身は自由、人権、法の支配など民主主義の諸価値を何より大切にしていることを訴え続けた。
また、首脳会談を拒否している中韓に対しても、「対話の窓」は常に開かれていることを強調し、徐々に国際社会での信用を高めていく。
孤立時に「助け舟」。
一方、オバマ氏は「世界中の首脳に友人がいない。特に英国、サウジアラビア、イスラエルと同盟国とは関係が悪い」(外務省)といわれる孤立気味の大統領でもあった。
26年6月にブリュッセルで行われた先進7力国、G7首脳会議では、ウクライナ問題を引き起こしたロシアへの制裁方針をめぐって首脳間でオバマ氏が孤立し、オランド仏大統領とは激しい口論にもなった。
そこに助け舟を出し、会議を軟着陸させたのが安倍首相だった。
周囲にこの時のことをこう明かしている。
「イタリアのレンツィ首相にはハイタッチを求められ、オバマ氏には初めてハグ、抱擁された」。
ようやくオバマ氏が、安倍首相への信頼を態度に表した瞬間だった。
さらに安倍首相は、安全保障と歴史問題の2つの面から戦略的に日米同盟強化を図る。
安保面では、一時的に内閣支持率を約10ポイント犠牲にしてまで、米国などからの要請が強かった特定秘密保護法と、集団的自衛権を限定容認する安全保障関連法を相次ぎ成立させた。
歴史問題では、米上下両院合同会議演説で「和解」のメッセージを発し、米国が歓迎できる戦後70年談話を発表した。
安倍首相はこの頃、「米国に対しては、歴史問題はもう終わった感がある」と感想を漏らした。
外交面での実績の積み重ねと、内政における高い内閣支持率の維持という強い政権基盤を示したことで、ようやくオバマ氏の広島訪問に持ち込んだのである。
一方、トランプ氏とはどうなるか。
安倍首相は会談後、周囲にこう今後への自信を示していた。
「トランプ氏と、外国首脳として最初に会えたのはよかった。初接触は重要だ。彼は基本的に、大統領就任までの会談要請は断っているということだ」。