米議会報告が警告する中国軍事戦略――尖閣をめぐる日中衝突の現実

米中経済安保調査委員会の年次報告は、中国の軍事拡張と尖閣奪取戦略を詳細に分析し、日本にとっての現実的な国難を示した。尖閣周辺の領海・空域での中国の活動は、日中軍事衝突、さらには米中戦争の発火点となる危険を孕む。2018年1月17日発信。

中国の多様な動向のなかでも、アメリカ側が最も真剣な注意を向けるのは、やはり軍事動向だといえる。
2018-01-17
以下は前章の続きである。
アメリカの懸念
中国の多様な動向のなかでも、アメリカ側が最も真剣な注意を向けるのは、やはり軍事動向だといえる。
この米中経済安保調査委員会は、まさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのである。
私自身はワシントン駐在の記者として長年、この委員会の活動には強い関心を向けてきた。
その活動の状況や結果を頻繁に報道してきた。
とくに私が産経新聞中国総局長として北京での二年間の駐在を終えて、また以前の勤務地のワシントンに戻ったばかりの2001年初め、同委員会はちょうど活動をスタートさせていた。
だから、米側でのその時点以降の中国の動向への対応には、ことさら注意を惹かれることとなった。
さて、その米中経済安保調査委員会が11月に2017年度の年次報告書を発表した。
全体で657ページに及ぶ長大な報告だった。
内容は米中2国間関係だけでなく、アメリカの国家安全保障に影響を与える同盟国の日本と中国との関係についても多くの章で言及していた。
日中関係については、同報告書はとくに両国関係の緊迫が尖閣諸島への中国の軍事がらみの攻勢によって高まっていることを強調し、中国側が具体的な尖閣奪取作戦を立案しているという見解をも紹介していた。
ここで浮き彫りにされるのが、中国側の野心的で危険な対日戦略だった。
この対日戦略の実態は日本にとっては、まさに国難だと特徴づけるのが適切だとみえるのである。
同報告書の尖閣諸島をめぐる中国の意図、行動、そして日本側との対立による危機についての記述の骨子は以下のようだった。
・中国政府は尖閣諸島の日本側の主権や、施政権の主張を中国領土の違法な占拠の結果だとみなし、その「占拠」を崩すために人民解放軍と中国海警の艦艇などによる尖閣周辺の日本の領海、接続水域への侵入を繰り返し、中国側の権利の確立を意図して、その結果を誇示している。
・中国側による尖閣水域侵入は2013年ごろに最も頻繁かつ活発だったが、2017年夏以降もかなり高い水準で続いており、現在は毎月平均3回となっている。
日本側も対抗手段はとっており、その結果、尖閣領域は誤算、偶発、意図的などによる日中間の軍事衝突の最大の潜在的な発火点となっている。
・中国側は尖閣を中心とする東シナ海の空域で空軍の各種の戦闘機、迎撃機、爆撃機などによる爆撃訓練や監視飛行をも続けており、日本側のスクランブル飛行を頻繁に引き起こしている。
とくに宮古海峡上空での中国軍機による爆撃演習は日本側の航空自衛隊だけでなく米空軍までの真剣な監視を招き、緊張を高めることとなった。
・以上のような現状から、日中2国間関係では尖閣諸島をめぐる両国の対立が緊張を高める最大の要因となり、実際に軍事衝突の危険をも生むようになった。
その背景として、中国の大規模な軍事拡張と侵略的な言動が日本側の反発をさらに高め、日中間の緊迫を強めている。
加えて、尖閣での日中の軍事衝突は日米安保条約による米軍の介入をもすぐに招き得るため、米中戦争の発火点ともみなされるようになった。
・中国人民解放軍の国防大学戦略研究所の孟祥青所長は最近の論文で「中国側は日本が長年、主張してきた尖閣諸島の統治の実権をすでに奪った」という趣旨の見解を発表した。
この見解は中国側の艦艇が、すでに尖閣諸島周囲の日本領海に自由に侵入し、日本側の主張する尖閣の施政権を事実上、骨抜きにしている現状に立脚しているといえる。
このままだと中国側は、尖閣諸島の施政権はもう日本側にはない、という宣言を近くする可能性も考えられる。
この稿続く。

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