「一帯一路」という名の債務の罠――奪われたハンバントタ港

中国からの巨額融資に追い詰められたスリランカが、ハンバントタ港の運営権を中国に譲渡。労働者の不安、地域社会の混乱、そして事実上の“売却”とされる99年リース。現地取材から見える「一帯一路」の現実と摩擦を描く。
中国からの多額の債務に追い詰められたスリランカが運営権を中国に差し出したいわく付きの港だ。
2018-01-18
以下は今日の産経新聞の7ページからである。
見出し以外の文中強調は私。
スリランカ 奪われたハンバントタ港
一帯一路「中国の罠だ」
中国の援助で建設されたスリランカ南部ハンバントタ港。
中国からの多額の債務に追い詰められたスリランカが運営権を中国に差し出したいわく付きの港だ。
一帯では解雇を懸念する労働者によるストライキが断続的に起きており、異様なまでの警戒態勢が敷かれている。
港は地域に何をもたらしたのか。
中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が生み出す摩擦の現場を歩いた。
(ハンバントタ森浩、写真も)
自由な港一変
「そこで何をしていた。お前は誰だ」
高台から港の全景をカメラに収めて離れようとした際、警備員が近づいてきた。
「ここは敏感なエリアだ。写真を撮ることは受け入れられない」と、強い口調で迫られ写真を削除せざるを得なかった。
中国とスリランカが主張する「商業的な港」とはかけ離れた実態がうかがい知れた。
高金利払えず 「植民地同然」
5ヵ所ほどの出入り口があるが、どこにも警備員が立ち目を光らせている。
「かつて港は誰でも自由に入れたんだ。小さい頃はよく魚釣りをした。中国が来てから窮屈になった」と話すのはタクシー運転手のハトタさん(50)だ。
海岸沿いに立ち並ぶ住居は空き家が目立ち、すべて港の拡大計画に伴って立ち退きを要求されたという。
コロンボの南東250キロに位置するハンバントタはかつては漁村で、今でも野生の象やイグアナが生息する自然豊かな場所だ。
港が建設されたのは2010年、親中派ラジャパクサ前政権下でのことだった。
費用約13億ドル(約1440億円)の多くは中国からの融資。
「当時は地元を潤してくれると思った」とハトタさんは振り返る。
だが、スリランカ側に重くのしかかったのは中国側が設定した最高6.3%の金利だ。
最終的には株式の70%を中国国有企業に99年間貸与せざるを得なくなった。
リース料として11億2千万ドル(約1240億円)が支払われるが、事実上の“売却″といえる。
「債務によるわなだ。植民地になったと同然だ」。
野党系国会議員は憤りを隠さないが後の祭りだ。
199年間の意味
憤りを抱えているのは政治家だけではない。
港の正門から200メートルほど手前の地点では、ストライキを起こしている港湾労働者が集会を開いていた。
僧侶も参加し、シンハラ語で「職か?死か?」と書かれた横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げた。
労働者側によると、中国側に運営権が移り、地元労働者が大量解雇される危険性が生じているという。
スト参加者の一人は「解雇の計画があると聞いているが、政府や中国側からは満足のいく説明がない」と不安と憤りを口にした。
一方、港湾開発を主導したラジャパクサ前大統領の支持者からは中国側への株式貸与などで「国の財産が外国に移った」として、現シリセナ政権に抗議する活動も起きている。
「確かに港が完成してある程度雇用は生まれた。それ以上に地域に混乱も生み出された」とは地元記者の言葉だ。
正門前での騒動とは裏腹に、港の中は行き交う車両も見えず、静まりかえっていた。
寄港する船は数日に1隻程度とされ、とても商業的に機能しているとは思えない状況だ。
ようやく接触できた中国人技師の男性は、港の貸与年数「99」という数字の発音が、中国語の「久久」(長い期間)と同じだと話し、「将来にわたってハンバントタを管理するという中国政府の意志の表れだ」と解説した。
地元の反発については「100年後にここが香港のような大都市になっているかもしれない。それなら地元も幸せなんじゃないか」と話した。

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