朝日新聞のフェイクが安倍晋三を引きずり降ろした。戦後体制の劣化と、菅政権の限界、中国危機を読む。
安倍晋三辞任の背景、戦後レジームに安住してきた朝日新聞のフェイク、菅義偉政権への期待と限界、さらに米中対決を鋭く論じた、目の覚めるようなプロローグである。
2020-12-31
戦後体制に安住してきた朝日新聞などはフェイクに次ぐフェイクをでっち上げ、とうとう安倍を引きずり降ろした。
以下は下記の書籍の目の覚めるようなプロローグからである。
*から始まる文章は私。*
菅政権への期待感は
2020年8月28日、突然、安倍晋三が首相辞任を正式に表明した。
持病の悪化が原因とされた。
アメリカ合衆国第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは、自らの生命が終わりにあることを自覚しても最期まで権力を手放さなかった。
老醜とされるが、大統領としての外交的秘密が多すぎて、大統領職をハリー・S・トルーマン副大統領(当時)にはすぐに譲れなかったのだ。
真珠湾攻撃の暗号を解読していたにもかかわらず、世論を一気に参戦へもっていくために、無理難題の「ハル・ノート」を提示して日本が攻撃してくるのを待った。
ルーズベルトは開戦に至る経緯も、ヤルタ会談でスターリンと交わした密約も、ハル・ノートという宣戦布告的な最後通牒のことも、核爆弾の開発状況も、トルーマンに語ることなく逝った。
だが、その後の対日戦略に大きな変更がなかったのは、ルーズベルトの側近がそのままトルーマンのまわりを固めたからだ。
安倍晋三の場合、ルーズベルトの身の振り方とは正反対。
マキャベリズムが基軸の国際政治の世界からすれば奇妙な美意識、政治家にあるまじき潔さと映っただろう。
13年前、2007年の第一次安倍政権の辞任劇も病気が理由だった。
このとき筆者は、たまたま某新聞社の政治部で『消費される権力者』(中央公論新社)の著者である遠藤浩一・拓殖大学教授と話し込んでいた。
そこへ政治部員が駆け込んできて、「大変だ。安倍が辞めるってよ」と叫んだ。
遠藤教授がひどく気落ちしたので、筆者は言った。
「山が高いと谷底は深い。安倍さんに理想を強く託したから落胆も大きい。あまり期待していなかった小生には落胆は少ないです」
それから数年もせずに遠藤教授は急逝した。
「これから」を期待された若い学者は突然消えた。
中国に反日暴動が吹き荒れて世論が猛反発していた時期に、第二次安倍政権は発足した。
まだ若く、強いリーダーシップを発揮してくれそうだった。
経済、外交両面で予想以上の成果をあげ、安倍は国民の期待に応えた。
黒田バズーカと呼ばれた金融緩和政策への転換で株価は跳ね上がり、GDP(国内総生産)も回復基調に乗った。
アベノミクスは想定外の成果を収めた。
ドナルド・トランプのアメリカ大統領当選直後、安倍は真っ先に渡米して日米同盟の確認を謳った。
日本外交の基軸たる対米外交を外務省ルートに頼らず、米国大統領と親密に話し込むなど、これまで見たことのない心強さを感じさせた。
ところが、2019年あたりから「変調」が見え、はがゆさを感じさせるようになった。
党内事情や連立相手が手かせ足かせになって重くのしかかっていたのだろう。
なにしろ自民党幹事長、二階俊博と連立相手の公明党がパンダハガー(親中派)ときている。
政治生命をかけると言いつづけた憲法改正は遅々として進まず、中国強硬策をとる米路線に背を向けて、「一帯一路」に協力すると言いだした。
世界が独裁者と非難してやまない習近平主席を国賓で招くと固執したときは、正気かと心配した。
*私は、この個所を読んでいて、NHKのwatch9で有馬が桑子と司会をしていた頃、「習さん、習さん」と連呼していた場面を思い出した。*
これまで積み上げた成果を無にする所業に思えた。
新型コロナウイルス対策のもたつきもあるが、靖國神社参拝もせず、保守系論客がこぞって反対した消費税10%増税を強行して、景気を一層悪化させるなど、正常な判断力を失っているように見えた。
期待を担っての再登板も、内なる敵である持病を再発させるほどのストレス漬けにより、安倍政治の目標は潰えた。
リーダーとは国民を統合し、民族的アイデンティティの価値観や伝統を尊びつつ、将来のビジョンを指し示し、国民を率いる統率力とカリスマ性をもつ。
信念のために戦う姿勢を見て、皆がついていこうと思う人物である。
小林秀雄は、石原慎太郎が政治家を目指すとしたときに、「政治家の価値とは、まわりの何人が、その人のために死ねるか」によって決まるという意味のことを言った。
明治維新以後、日清・日露戦争を戦い抜いてきたわが国は、国民精神とリーダーの目論見とが軌を一にしていた。
戦後、岸信介は政治生命をかけて不平等条約の改定(日米安全保障条約改定)に持ち込んだが、これは小村寿太郎の不平等条約撤廃に相当する成果である。
ところが、以後、沖縄返還の佐藤栄作あたりから「自由と民主主義による福祉国家の実現」が国家目標となり、政治は矮小化した。
中曽根康弘は首相就任早々に、「私の政権中に憲法改正はない」と過去の主張をしまい込んだ。
爾後、ふるさと創生とかの大盤振る舞いの竹下登、「アンパン総理」橋本龍太郎、宇宙人、スッカラカンと続き、憲法改正を前面に出す安倍晋三を待たねばならなかった。
戦後レジームの克服を唱えるや、戦後体制に安住してきた朝日新聞などはフェイクに次ぐフェイクをでっち上げ、とうとう安倍を引きずり降ろした。
永田町の劣化は凄まじい。
皆が「国家百年の大計」を忘れたかのように、世襲議員は国家の基本に関心がなく、選挙ではもっぱら女性票を求めて「女性の唇と女陰にむかって叫ぶ」(石川達三)。
まるで、何も決められないでおろおろした徳川幕府末期の幕閣とそっくりである。
今後の菅義偉政権は、中国に対していかに対応するのか。
それが日本政治の最大の懸念材料である。
主なき組織体は、番頭がしばし采配する。
しばらく日本政治は番頭政治となり、多くは期待できそうにないように思える。
未曽有の危機に気がつかない日本の鈍さ
2020年9月22日、トランプ大統領は国連総会という国際政治の表舞台で、チャイナウイルスによる惨状を訴え、感染拡大の主犯である中国に「責任をとらせる」と発言した。
対して中国の国家主席、習近平はトランプを「ガキ大将」と罵った。
米中対決は熱火器も大砲もミサイルもともなっていないが、事実上の戦争状態にある。
2020年6月17日に、解決の糸口を探ろうと開かれたマイク・ポンペオ米国務長官と中国外交のトップ楊潔篪国務委員との会談は7時間にわたった。
だが、何一つ合意できず、物別れに終わる。
会場はハワイ州ホノルルのヒッカム空軍基地。
米国にとって「真珠湾攻撃」が行われた象徴的な場所の選択だった。
ハワイ会談に同席したデイビッド・スティルウェル国務次官補は空軍パイロット出身で、「中国側は一つの譲歩案ももっておらず、対話は決裂した」と語った。
トランプ大統領は、2019年11月27日に香港から自治権を奪う中国への制裁を目的とする「香港人権・民主主義法」に、2020年7月14日には「香港自治法」に署名し、香港への優遇措置を廃止した。
この署名日にもう一度、注目されたい。
11月27日(米国時間26日)とは、1941年にアメリカが日本に「ハル・ノート」を突きつけた日である。
これら一連の動きを見ていると、あたかも戦前のハル・ノートに匹敵するほどの強硬措置だと中国は受け取っただろう。
まして、署名日には歴史の寓意が込められていた。
極めつけが2020年7月23日だ。
この日、ポンペオ国務長官はカリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で講演を行ったが、その演説内容は、「中国共産党と中国の国民は異なる。全体主義イデオロギーの信奉者・習近平と闘え」とする凄まじい敵視路線を確認するものだった。
この日はフランス革命が勃発した日である。
アメリカの対中外交は1972年2月21日のリチャード・ニクソンの訪中から出発した。
会場の選択にも、「中国との関係をニクソン以前のゼロにもどす」という強烈なメッセージが込められていたのだ。
ポンペオ国務長官は、演説の冒頭で次のように言った。
「私はロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、クリストファー・レイFBI(連邦捜査局)長官、ウィリアム・バー司法長官に中国に関してスピーチを行うよう依頼した。そして今日、私は4番目となるスピーチを行いたい」
続けてポンペオは、「ハル・ノート現代版」ともいえる発言を展開するのである。
「われわれの目的は、トランプ大統領の対中政策が伝えようとしている中国共産党によるアメリカ国民への脅威、そして様々な自由を守るための戦略がすでに設定されたことだ」
すなわち、従来の米国の対中外交を180度変える、これまでの歴代政権の対中外交は間違いだったと明言したのである。
そして台湾の蔡英文総統を、外交関係がないのに「総統(プレジデント)」と呼んだ。
中国が台湾を「一つの中国」としているのに対し、アメリカは独立国家として扱うというメッセージだ。
ここでポンペオが名前をあげたトランプ政権の要人3人が、中国についてどのような発言をしているか、確認しておこう。
オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官。
「中国共産党は全体主義を信奉している。この党の陰謀を暴くことは世界の人々の福祉のためである」(2020年6月24日、ミズーリ州)。
レイFBI長官。
「中国共産党は民主主義国家へ勢力を浸透させ、秘密情報網を構築し、サイバー攻撃などでアメリカ経済と国家安全保障に計り知れない損害をもたらした。中国共産党による経済スパイ活動は過去10年で13倍となった」(2020年7月7日、ハドソン研究所)。
バー司法長官。
「中国共産党の世界征服の野望をいかに砕くか。アメリカならびに全世界が直面したもっとも重要な課題であり、中国に協力する企業はその手先だ」(2020年7月16日、ミシガン州のジェラルド・R・フォード大統領博物館)。
注意して読み返すと、いずれも「中国共産党」を名指ししながらも、「中国」とは言っていないように、たくみに言葉を使い分けている。
共産党だけが敵であると区別しているのである。
ポンペオ演説を日本に置き換えると、実感として伝わるだろう。
すなわち日本の外務大臣が田中角榮記念館で、「日本の過去半世紀にわたった日中友好関係は破綻した。中国共産党は日本の安全を脅かす敵であり、『相互互恵』は虚言だった。中国共産党の陰謀を暴き、これに協力する日本人、ならびに日本企業は彼らの手先だ」と発言したことに等しいのだ。
あらためて指摘しておきたいが、ポンペオは「党」と「中国国民」を峻別したうえ、習近平を「総書記」としたが、「国家主席」とは呼ばなかった。
この峻別を助言したのが華人のアドバイザーだったことは後節で述べる。
大東亜戦争開戦前夜に酷似
かつて大東亜戦争へとなだれ込んだ日米激突の最終局面は、「ABCD包囲網」(日本への石油など戦略物資禁輸)だった。
当時、日本はカリフォルニア州から80%の石油を輸入していた。
挙げ句、ハル・ノートという事実上の宣戦布告を突きつけられた。
その内容は、いかに寛大な国でも、モナコのような防衛力のない国でさえも、「拒否」以外の選択肢が存在しない要求である。
その後のアメリカにおける在米資産の没収と在米日系人の強制収容所入りにつながった。
現状と対比すれば、中国四大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行)への融資中断・禁止となる。
またアメリカ政府は、ウイグル族弾圧に関連する中国企業をブラックリストに記載し、中国人留学生ビザ条件の強化という「留学封鎖」を敢行し、企業ならびに大学ラボ、大学院からの中国人排斥、スパイ容疑での中国人の逮捕、華為技術(ファーウェイ)社員へのビザ発給中止など、次々と断行した。
最終的には中国共産党員のアメリカ入国禁止を検討している。
まさしくFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)政権が、日本を周到に追い込んだ1940年代のプロセスに酷似してきた。
ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は、「この米中の5ヵ月の動きは、1941年の開戦にいたる5ヵ月の状況の推移と酷似している」と述べた。
アリソン教授は覇権国が新興国と戦争不可避な状態に陥るという「トゥキディデスの罠」の提唱者であり、著書『米中戦争前夜』(ダイヤモンド社)でも知られる。
アメリカはヒューストンの中国領事館をスパイの巣窟だとして閉鎖を命令し、中国はただちに報復にでて成都のアメリカ領事館を閉鎖した。
領事館の閉鎖とは外交断絶に近い行為で、戦争前夜の行為にあたる。
大東亜戦争開戦前夜にも、交換船でそれぞれ相手国にいた在留者を送還している。
アメリカからは多くの中国人留学生、研修生が帰国した。
後略。
*私は最近、日本経済新聞は中国による工作の影響を大きく受けている新聞であるとの確信が日増しに強くなっている。*
