『諸君!』休刊の痛恨と、中道右派編集者の充実した人生

2019年6月24日発信。
産経新聞の読書欄で紹介された『『諸君!』のための弁明』を手がかりに、休刊した雑誌『諸君!』の意義、朝日新聞批判の歴史、中道右派を貫いた編集者の人生の重みを論じた一篇。
小田実に対する違和感や、週刊誌をめぐる時代の変化にも触れながら、言論の場としての雑誌の役割を再考している。

2019-06-24
座談会を頼んだ文春側に、特定のホテルを要求し、謝礼の額を聞き、その場で値上げを求めたという。やはり、そうだったか。

以下は昨日の産経新聞の読書欄からである。
『諸君!』のための弁明
何と羨ましい著者の人生
仙頭寿顕
(草思社・1800円十税)
文芸春秋の「週刊文春」編集者やオピニオン誌だった「諸君!」編集長を経験したベテラン編集者が、担当した筆者との詳細なやりとり、それに絡んだ話題、読んだ書物、記事などの論評を独特の語り口で述べている。
ストレートの喜怒哀楽ではなく、諧謔と皮肉、それに加えて随所に登場するのが、ジョージ・オーウェル(『1984年』で知られる英国作家)、中村菊男(左右社会党の統一に際し、右派代表として統一綱領を作成した政治学者)、「同憂の士」の仙頭夫人の3人だ。
取り上げられている人物のほとんどが友人・知人か、テレビでこちらが一方的に知っている人々なので、読み始めたらやめられなくなる。
意外だった話も随分あった。
初の女性官房長官、森山真弓氏とデ・ブースペクター氏の対談のゲラをチェックに出したところ、警察出身の「秘書官」がスペクター氏の発言に数行にわたって「トル」と指定し、とらなければ掲載不可と言い出したそうだ。
著者は警察権力に腹を立てている。
同感だが、週刊誌全体に対する世の中の評価が変わった一面ものぞいているように思われる。
べ平連(ベトナムに平和を!市民連合)で北朝鮮の礼賛もしていた小田実氏はどうも人間的に信用できないと思っていた。
座談会を頼んだ文春側に、特定のホテルを要求し、謝礼の額を聞き、その場で値上げを求めたという。
やはり、そうだったか。
「諸君!」の休刊は返す返すも残念なことだった。
採算が取れなくなったのと文春内で路線を心よく思わない人々が増えてきてしまったという事情はよくわかった。
しかし、プラスの面を取り上げれば、この雑誌の果たした役割は小さくなかった。
当時、勇気を要した朝日新聞批判は、佐瀬昌盛氏らが先鞭をつけたが、その結果はどうなっているか。
立場を明らかにしない編集者が多い中で、著者は「中道右派」を自称し、学生のときからそれを貫いてきた。
数え切れないほど多数の人間と接し、自らの正しさを確認してきた著者の人生は、何と充実していることか。
本書を読んで羨む人は多いだろう。
評・田久保忠衛(杏林大学名誉教授)

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