朝日新聞が壊した日韓関係|光復節演説と貫かれる「安倍批判」
2019年10月19日発信。
別冊正論「堕ちたメディア」に掲載されたKadota Ryusho氏の論文をもとに、文在寅氏の光復節演説、北朝鮮の反発、朝日新聞の社説を検証する。
慰安婦問題や徴用工問題をめぐる朝日新聞の報道が日韓関係を根本から悪化させたことを論じる。
2019-10-19
朝日がなかったら、日韓関係がここまでこじれることはなかったと思うと日本人のひとりとして本当に残念であり、腹立たしく思う。
以下は有数の読書家である友人が、本当に読み応えのある論文や対談が満載だから、と、購読を勧められた、別冊正論「堕ちたメディア」、「メディアはなぜ堕ちたのか」の特集、その巻頭を飾っている門田隆将氏の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読の、この本は、926円なのである。
特に、月間約5,000円を払って朝日新聞を購読し、NHK等を視聴しているだけの人たちは、今すぐに、最寄りの書店に購読に向かうべきだろう。
以下は先日ご紹介した章の続きである。
意外だった「光復節」演説。
だが、文氏と朝日新聞がタッグを組んだ“暴走”にも少し変化が生じてくる。
八月十五日、日本からの解放記念の光復節記念式典。
ここでの文氏の演説は意外なものだった。
「私たちは、過去にとどまらず、日本と安全保障や経済協力に手を携えてきました。日本と一緒に、植民地時代の被害者の苦痛を癒し、歴史に学びながらしっかりと手をつなごうという立場を堅持してきました。過去を反省することは、過去にしがみつくのではなく、過去を乗り越え、未来に進むことです。私たちは日本が隣国に不幸を与えた過去を反省し、東アジアの平和と繁栄を共に導いていくことを望んでいます。日本が対話と協力の道を選ぶなら私たちは喜んで手を取り合うでしょう」
これは、聞く者を驚かせた。
日本による韓国の「ホワイト国除外」直後の光復節である。
つい二週間近く前、「盗人猛々しい」とまで言ってのけたのにいったい、どうしたことなのか。
さすがにあの発言を諌める人がいたのか、あるいは、あれだけ罵っても全く日本に反応してもらえなかったことがショックだったのか。
いずれにしても、日本批判のトーンが一気に落とされたのだ。
さらに文氏はこう語った。
「いま朝鮮半島の非核化と平和構築のための全体の過程において最も重大な峠に差しかかっています。不満な点があるといっても対話の枠組みを壊したり、壁を築いて対話を難しくすることは望ましくありません。不満があるならそれすらも対話の場で問題を提起し論議するべきです。私は任期内に非核化と平和体制を確固たるものにすることを誓います。2032年には、ソウル・平壌共同オリンピックを成功裏に開催させ、遅くとも2045年の光復100周年には平和と統一で一つになった国、ワンコリアヘと世界の中で聳え立てるよう、その基雁をしっかりと整えていくことを約束します。統一すれば、世界経済6位の国、国民所得7万~8万ドル時代が開かれるでしょう」
予想もしない演説だった。
かねて文氏の悲願といわれる南北統一だが、その思いがこんな表現で語られることを誰が考えただろうか。
貫かれる朝日の「安倍批判」。
しかし、当の北朝鮮の「祖国平和統一委員会」からは、翌日、こんな言葉が返ってきた。
「私たちは南朝鮮当局者とこれ以上話す言葉もなく再び対座する考えもない。合同車事演習がおこなわれている時に、対話や平和という言葉をどんな体面で叶さ出すのか、本当に」図々しい人だ。北南対話の動力が失われたのは自業自得。演習後に自然と対話局面が訪れるというのは妄想だ」
猛反発だった。
文氏渾身の演説も、北朝鮮の痛烈なこの反発で台なしになってしまったのである。
では、文氏にとって常に“最大の応援団”である朝日はこれをどう論評したのだろうか。
八月十七日、〈日本と韓国を考える次代へ渡す互恵関係維持を〉と題して、朝日はこんな社説を掲げた。
〈日本と韓国はこの夏、打開の糸口すら見つけられない政治の対立を続けている。両国間では政治の関係が市民社会に伝染したかのように、ささくれだった感情がぶつかり合う。その結果、比較的堅調だといわれてきた経済や文化の関係にまで暗雲が漂い始めた〉
社説はそう書き始めるが、これまでの主張とは異なり、かなり日本側に配慮した内容になっていた。
朝日といえども国民が圧倒的に支持する日本政府の政策に、さすがに露骨な反対が唱えにくくなったのかもしれない。
〈いまの日韓の対立の発端は、歴史問題である。両国間の慰安婦合意を文政権が骨抜きにしたうえ、戦時中の元徴用工らについて韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じる判決を出した。判決は、日本による20世紀初めの韓国併合自体が不法だったとの前提で導かれた。併合をめぐっては1960年代に至る国交正常化の交渉でも対立し、最終的に「もはや無効」という玉虫色で決着させた経緯がある。日本政府が反発するのは今になって併合至不法とするなら、賠償の範囲が際限なく広がりかねないためだ。文政権も司法の判断を尊重するとしつつ、これまでの行政府の見解と相いれない部分があることは認識している。ただ、いつまでも判断を持ち越すなら、状況は改善しないだろう〉
一方的に日本批判をおこなっていたこれまでの論説とは明らかに違う。
〈演説で文氏はこうも語った。韓国は植民地支配の被害者らに対し、「日本とともに苦痛を実質的に癒そうとし、歴史をかがみとして固く手をつなごうとの立場を堅持してきた」と。まさにこの歩みこそ、両国が編み出してきた外交の知恵だったはずだ。国交正常化の協定があいまいさを残していたとしても、それを後世の政治が不断の努力で補ってきたのである。その意味で文氏には今こそ行動を求めたい。まずは慰安婦合意を再評価し、尊重すべきである。合意は朴槿恵・前政権が結んだといっても、いったん国家間で交わされた約束が反故にされるなら、信頼は保てない。保守政権の実績を否定したことで、結果的に対日関係の悪化を招き、自らを苦しめていることを省みる必要がある〉
驚きである。
朝日から文氏へこんな注文がつけられるのは、いかに国民の怒りが韓国に、あるいは朝日にブツケられているかの証左だろう。
だが「安倍批判」だけは以前と全く変わりない。
社説はこう続く。
〈演説とは裏腹に、光復節では安倍政権を糾弾する集会が韓国各地で開かれた。日本というより、政権に問題があるとの見方が強まっている。輸出規制の強化に踏み切ったことで、安倍政権が事態を複雑にしたのは確加だろう。文政権に問題はあったにせよ、政治・歴史問題から本埀切り離しておくべき経済にまで対立を広げたのは適切ではなかった〉
社説はわざわざ〈なぜ[反安倍]なのか〉という小見出しを掲げてこう記述したのだ。
あくまで安倍氏に問題があるという姿勢だ。
〈韓国を突き放すだけでは解決の道は開けない。もともと歴史問題をめぐって安倍政権は、過去の反省に消極的だという評価がつきまとう。そこに抜きがたい韓国側の不信感がある。その払拭のためには、改めて朝鮮半島に関する歴史認識を明らかにすべきではないか。文政権による慰安婦合意の再評価と同時に安倍政権の認識を発する措置を話しあってはどうか〉
このあたりが朝日の朝日たる所以である。
歴史認識を明らかにして、「韓国民を慰撫せよ」ということなのだろう。
どんなに謝罪しても、どれほど首相の言葉が伝えられようと納得してこなかった韓国に、朝日はそれでも「歴史認識を明らかにせよ」というのである。
そもそも慰安婦が日本軍や日本の官憲によって強制連行された、あるいは慰安婦と女子挺身隊を混同するなど、あり得ない誤報を飛ばして日韓関係を根本から破壊したという自覚は同紙にはないようだ。
そして社説はこう結ばれる。
〈半世紀前の国交樹立に伴い、日本が提供した経済協力金は、現代の韓国の基礎を築いただけでなく、日本経済の成長にも寄与した。両国は常に互恵の関係で発展してきた実績がある。負の記憶がまだ色濃く残る時代の壁を越えて先人たちが積み上げた苦心の結びつきは、何物にも代えがたい平和の財産である。今後、日韓はどんな関係を次世代に引き継いでいくのか。双方の政府と市民が冷静に熟考するときではないか〉
まさに仰る通りだ。
「負の記憶がまだ色濃く残る時代の壁」を越えた先人たちには、真実の歴史がわかっていた。
だから慰安婦も問題にならなかったし、徴用工についても、募集工や自由工との区別がしっかりとついていたのだ。
それだけに歴史が捏造されていくきっかけを創った日本の新聞の罪は重い。
朝日がなかったら、日韓関係がここまでこじれることはなかったと思うと日本人のひとりとして本当に残念であり、腹立たしく思う。
この稿続く。