北朝鮮による日本海への弾道ミサイル発射は、日本海を支配下に置こうとする意志の表れだ。
2019年12月8日発信。
月刊誌WiLLに掲載された山田吉彦氏の論文「風雲急を告げる日本海」を紹介する章。
中国の海洋侵出計画、第一列島線・第二列島線、南シナ海の人工島軍事拠点化、尖閣諸島周辺での中国海警局の活動、無断海洋調査、日本海をめぐる韓国・ロシア・北朝鮮の脅威、北朝鮮の弾道ミサイル発射を論じる。
2019-12-08
風雲急を告げる日本海…北朝鮮による日本海に向けた弾道ミサイル発射は、日本海を支配下に置こうとする意志の表れだ
以下は、風雲急を告げる日本海、と題して今月号の月刊誌WiLLに掲載された山田吉彦氏の論文からである。
山田吉彦氏も日本にとっては貴重な本物の学者の一人である。
北朝鮮による日本海に向けた弾道ミサイル発射は、日本海を支配下に置こうとする意志の表れだ
中国の海洋侵出計画
どれだけの日本人が、現在の日本の「海」の置かれている状況を知っているだろうか。
日本を取り巻く海の情勢は、危機的状況を呈している。
国家は、隣国を選ぶことはできない。
また、国際社会は、隣国の脅威や侵略から我が国を守ってはくれない。
他国の武力や国際法にすがっているだけでは、日本の平和と国民生活の安全を守ることはできないのだ。
最も厄介な隣人は、わが国固有の領土である尖閣諸島の奪取を目論む中国であろう。
中国は、尖閣諸島を基点として東シナ海の制海権の獲得を目指すとともに、北西太平洋の玄関口にあたる沖縄諸島の支配も目標としている。
琉球独立を叫ぶ学者のグループは、中国国内のセミナーに参加するなど、中国共産党とは密接な係りを持っている。
中国の海洋侵出の計画は、1980年代に鄧小平指導下で策定されたものが、脈々と受け継がれている。
第一列島線と呼ばれる沖縄諸島、台湾、フィリピンなどを結ぶラインの内側を中国の支配下に置く計画は南シナ海に軍事拠点となる人工島を建設したことにより大きく進んだ。
ファイアリー・クロス礁、ミスチーフ礁、スビー礁の岩礁に建設された人工島は、すでに空港、港湾整備が進み、対艦ミサイルの拠点が形成されるなど、軍事都市化している。
さらに、彼らが第二列島線と呼ぶ小笠原諸島から太平洋島嶼国、パプアニューギニアを結ぶラインに影響力を持つ計画は、台湾と国交を持つ島嶼国に対し経済援助などをちらつかせ、台湾との断交を求め、中国との国交樹立を進めるとともに、露骨な経済進出を行い、社会的な支配力の浸透を目指している。
2019年には、ソロモン諸島、キリバスがあいついで、台湾との国交を断絶し、中国との国交を樹立した。
すでに、ソロモン諸島では、中国企業が経済特区をつくるとして、一つの島を75年間租借する契約を結んでいる。
無断で海洋調査
東シナ海の尖閣諸島周辺海域では、中国海警局の警備船が4隻、日常的に航行しており、月に3回ほどの頻度で我が国の領海にも侵入している。
2012年、石原慎太郎東京都知事(当時)が尖閣諸島を都が購入する計画を発表したことに対抗した民主党政権が、将来展望を持たないまま、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島の国有化に踏み切って以来、状況は悪化の一途を辿っている。
現在では、海上保安庁が六百人規模の尖閣諸島専従部隊を配備し、厳戒態勢を敷いているが、海域に侵入する中国海警局の警備船の方が、規模的に大きくなっているのが現状である。
尖閣諸島の魚釣島には、1978年に日本青年社が建設した灯台があり、2005年に日本政府に譲渡され、海上保安庁により管理されている。
しかし、この灯台の光の到達距離は、5.5海里(約10.2キロ)と短く、領海内すら照らすことができない。
海図には記載されているものの、櫓づくりの簡易灯台では、日本の主権、施政権を示す光としては、あまりにもお粗末である。
中国は、尖閣諸島周辺で警戒に当たる警備船や周辺で漁を行う大船団の様子を、メディアを通じて世界中に配信することにより、尖閣諸島は日本の施政下にはないという印象操作を行っている。
日米安全保障条約の適用範囲は、第5条により「日本の施政下」にあるということが条件なのだ。
中国の尖閣諸島海域への侵入は、米国の動きをけん制する目的もありその先には台湾の併合が視野に入れられているようだ。
早急に尖閣諸島が日本の施政下にあることを国際社会に対し、明確に示さなければならない。
灯台の建て替えも含め、日本政府が国家の責務として、周辺海域の安全確保や環境保全に尽くす体制をつくり、世界にアピールすることが必要だろう。
また、中国の調査船は、日本の排他的経済水域(EEZ)において無断で海洋調査を行っている。
これは国際法違反であるが、日本は不当な海洋調査を裁く法律を持たないため、警告だけにとどめている。
日本の海底資源が奪われかねないのである。
日本に対する挑戦
また、日本海を挟み接する隣国への対応は、日本政府のみならず国民全体の悩みの種である。
竹島を奪い、さらに、国際協定や条約を守らずに日本に無体な要求を突きつける韓国、日露平和条約の締結を求めながら占領している北方四島の返還要求を無視するロシア、そして、拉致被害者の問題を誤魔化し、さらにミサイル発射をはじめとした多くの不穏な動きを続ける北朝鮮。
特に北朝鮮の日本に対する挑戦的な活動はとどまるところを知らない。
北朝鮮は、2016年以降、核実験や弾道ミサイル発射を頻繁に行っている。
国連安全保障理事会は、この北朝鮮の国際社会に対する挑戦的な行為に対し、制裁決議を行い、燃料などの北朝鮮向け輸出、また、北朝鮮からの石炭や水産物の輸出を規制した。
しかし、北朝鮮は国連決議を無視するかのごとく、核開発、弾道ミサイル発射実験を続けているのだ。
2019年に北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、日本海に落下する短距離型が多く、攻撃の仮想目標は韓国及び日本となっている。
しかし、アジアの安全保障に主導的な役割を担ってきた米国のトランプ大統領は、北朝鮮の発射するミサイルの飛行距離が短いことから脅威は感じないとして黙認する発言を行うなど、東アジアの安全保障体制に対し興味をなくしつつあるようだ。
また、本来、北朝鮮の脅威を最大に感じるべきである韓国の文在寅政権は、いまだに南北融和の幻影に酔いしれ、迫りくる危機から目を背けている。
そのような国際情勢の中、北朝鮮は、10月2日午前7時過ぎ、東岸から2発の弾道ミサイルを発射し、その内の1発は島根県沖の日本のEEZ内に落下した。
この海域は、日本の漁船が出漁する海域であり、日本にとって極めて危険な事態であった。
また、北朝鮮政府は、潜水艦からのミサイル発射にも成功したと公表した。
これらは、日本に対する挑戦であり、日本海を支配下に置こうとする意志の表れである。
この稿続く。