あの日の光は、まだ生きている――万博・大屋根リング、リヒテルとアシュケナージの響きとともに

撮った時には、まだ気づいていなかった美しさがある。
写真を見返すうちに、私は何度も手を止めた。
こんなにも豊かな表情が、あの日の光の中にあったのか。
2025年7月中旬に初めて訪れて以来、私は頻繁に大阪・関西万博へ足を運び、大屋根リングにカメラを向けた。
先に選んだ7月19日、9月17日、10月9日の写真に、今回は7月25日に撮影した31枚を加えた。
写真は、私自身が予想していた以上に良かった。
だからこそ、もう一つの作品集を作らずにはいられなかった。
同じ場所を歩いても、同じ光には二度と出会えない。
夏から秋へと移りゆく時間の中で、私は、その時にしか見えないものを撮っていたのだと思う。
今回、その写真に重ねたのは、まず、スヴャトスラフ・リヒテルが奏でるドビュッシーの《ベルガマスク組曲》全曲。
続いて、同じくリヒテルの演奏による、プロコフィエフのピアノ協奏曲第1番。
そして最後に、ウラディーミル・アシュケナージの演奏で、同じピアノ協奏曲第1番の第1楽章を置いた。
写真の中に残された光に、ピアノの響きが重なる。
すると、一枚の写真を見つめる時間そのものが変わってくる。
静けさの中に奥行きが生まれ、見過ごしていた表情が、ふと眼に入る。
やがてプロコフィエフの音楽が、画面に新たな勢いをもたらす。
そこには、私が万博を歩き回り、次に心を動かすものを探していた時の気持ちにも通じるものがある。
リヒテルからアシュケナージへ。
同じ協奏曲を異なるピアニストの演奏で聴くことも、この作品集の楽しみの一つである。
未来を見るために訪れた場所で、私は、かけがえのない現在を撮っていた。
その現在は過ぎ去った。
けれど、写真の中の光は、今も私を立ち止まらせる。
あの日の光は、まだ生きている。
音楽とともに、その美しさを皆さまに届けたい。


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