心を小舟にあずけて、富士を望む――三保の松原・日本平とドビュッシー《小組曲》全4曲の映像詩
心を小舟にあずけて、富士を望む。
2025年6月5日。
三保の松原と日本平から見た富士山を、ドビュッシー《小組曲》全4曲とともに、4Kの映像にした。
最初の曲は《小舟にて》。
音楽が、そっと岸を離れる。
その揺らぎに心をあずけると、慌ただしかった時間まで、ゆっくりと流れ始める。
遠くに富士がある。
ただ、そこにある。
その姿を見つめているうちに、何かを急いで求めていた心が、静かになってゆく。
小舟には、大きな荷物はいらない。
今日まで抱えてきた言葉も、言えなかった思いも、しばらく岸に置いてゆけばよい。
忘れるためではなく、もう一度、大切に抱きしめるために。
三保の松原から仰ぐ富士。
日本平から望む富士。
見る場所が変われば、同じ山が、違う表情で迎えてくれる。
私たちの記憶も、そうなのかもしれない。
遠く離れて初めて、その美しさに気づく日がある。
《小舟にて》から《行列》へ。
《メヌエット》から《バレエ》へ。
静かな揺らぎに始まった音楽は、歩みを重ね、優雅に舞い、やがて生きる喜びを響かせる。
富士を見つめる時間にも、その音楽が流れてゆく。
世界のどこかで、この映像を見ているあなたへ。
今いる場所も、話す言葉も、歩んできた人生も違う。
それでも、美しいものを前にして、言葉を忘れるひとときを、私たちは分かち合える。
どうか、この短い旅のあいだだけは、心を急がせずに。
音楽を小舟にして、富士の見える方へ。
この風景が、いつかあなたの記憶の中にも、静かに帰れる岸をつくりますように。
音楽:クロード・ドビュッシー《小組曲》全4曲
- 小舟にて — En bateau
- 行列 — Cortège
- メヌエット — Menuet
- バレエ — Ballet
撮影日:2025年6月5日
撮影地:三保の松原・日本平(静岡県静岡市)
撮影・映像制作・文:MIKIO KISARA
4K映像