光が戻った大阪、ポリーニが呼び覚ます歳月――133枚の写真と私の音楽遍歴

雲が晴れ、街に光が戻る。
一曲のピアノが流れ、遠い日の自分が戻ってくる。
2026年11月3日、大阪。
朝から快晴だったこの日、仕事を終えて撮影に向かった頃には、空は雲に覆われていた。
それでも、いつもとは違う場所からグラングリーン大阪にカメラを向けていると、一気に晴れてきた。
この日に撮影した133枚を、1枚につき10秒で構成した。
それでも音楽の長さには足りず、10月29日と10月25日に撮影した写真を合わせて20数枚加え、一つの4K写真作品に仕上げた。
三つの日に写した大阪の秋が、ひと続きの音楽の中で出会う。
この写真に重ねる音楽は、数日前から決めていた。
マウリツィオ・ポリーニによる、ショパン《エチュード作品10》全12曲である。
先日、YouTubeから第1番ハ長調が流れてきた時、私は、ピアノの響きに明け暮れていた歳月を思い出した。
高校3年生が始まると同時に、約束されていた人生が終わった。
受験勉強に向けていた思いが、一瞬にして霧散した。
朝から晩まで、NHK-FMでクラシックを聴いて過ごした。
やがて家を離れ、東京で土方仕事をして糊口をしのいでいた時も、上野の東京文化会館へ、中村紘子とアンドレ・ワッツを聴きに行った。
大阪を人生の舞台に選んでからは、新進の演奏家から大家まで、来日ピアニストの来阪公演に足を運び続けた。
当時の私の耳と心を占めていたのは、ほとんどピアノだけだった。
その私に、最大の衝撃を与えたのがポリーニである。
長い沈黙を経て、このアルバムとともに再び現れた彼の響きは、私にとって空前絶後のものだった。
今の街を写した写真に、あの頃から私の中に残り続けている音楽を重ねる。
大阪をご存じの方にも、まだこの街を訪れたことのない方にも、その光と、ひとりの人間が音楽とともに歩んできた時間を届けたい。
快晴の朝から撮り始めることはできなかった。
けれど、撮影を続ける私の前で、空は晴れた。
撮影日:2026年11月3日、10月29日、10月25日
撮影地:大阪・梅田、北ヤード/グラングリーン大阪周辺
写真構成:11月3日撮影の133枚に、10月29日・10月25日撮影の写真を合わせて20数枚追加
表示時間:1枚につき10秒
映像:4K
音楽:フレデリック・ショパン《12のエチュード 作品10》全12曲
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
撮影・文章・映像構成:MIKIO KISARA

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