女流作家に屈伏した週刊新潮 — 深沢潮抗議事件と「創氏改名」をめぐる朝日新聞の歪曲

深沢潮の抗議を受け『週刊新潮』が即座に謝罪した背景には、在日文学賞受賞者との対立を避けたい出版社側の思惑と、日中韓の作家ネットワークによる圧力があると高山正之氏は指摘する。
さらに朝日新聞・毎日新聞が「創氏改名」を再び日本の「植民地支配」と結びつけて報じた点は、歴史的事実の歪曲であり、日本名を自ら望んだ朝鮮人が多かった実例を隠すものだという。
今回の一件で『変見自在』は休載に追い込まれ、日本の言論空間における“歪んだ声の力学”が露呈した。


以下は前章の続きである。
見出し以外の文中強調は私。

なぜすぐに謝罪したのか。
ところが、コラムの内容に深沢が抗議してきた。
こちらはコラムの最後に「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と書いたが、そのことに対し、「暴論を展開し、社会の差別感情を煽った」と。
8月1日、深沢の弁護士佃克彦が、新潮社にコラム内容を抗議する記者会見を8月4日に衆議院第二議員会館で実施すると連絡。
実際に4日、会見が開かれたが、深沢は記者会見で。「私の心は打ち砕かれた。レイシズムに基づいた差別扇動となる、事実誤認のあるコラムが信頼していたデビュー版元の媒体に載ったことは、私一人で済ませていい問題ではない」とし、新潮社に向け、文書による謝罪と、批判・反論するためのスペースを誌上に確保するよう求めた。
同日、新潮社は《「週刊新潮」コラムに関するお詫びと今後について》と題し、謝罪文を公式HPに掲載した。
2018年の『新潮45』の騒動のときとよく似ている。
当時国会議員だった杉田水脈が性的少数者のカップルは「生産性がない」と言った。
それに対して一部から囂々たる非難の声があがり、雑誌は休刊に追い込まれた。
杉田の主張の真意を誌面で明らかにすべきだったが、新潮社はそれをしなかった。
今回の件で新潮社がすぐに謝罪した理由はこうだ。
深沢は先述したように、在日女性の物語『金江のおばさん』で新潮社が主催する「女による女のためのR-18文学賞」を受賞しており、新潮出版部が深沢ともめることを嫌がったと別のソースから聞いた。
加えてペンクラブなど今どきの作家の中で日中韓の作家が「日本は悪かった」を共通テーマにする動きがあるとも聞く。
そうした勢力が新潮に書いている執筆者に圧力をかけて新潮をビビらせたことは十分あり得ると思う。


朝日の歪んだ歴史認識。
それに拍車をかけたのが、会見の翌日の8月5日、朝日、毎日、東京、産経新聞と、大手紙がこぞって今回の騒動を取り上げたことだ。
こちらは日頃から「朝日、毎日、東京各紙はまともに取材もしない、新聞と名乗るべきじゃない」と書いてきたが、今回もそれに漏れず、こちらに一切の取材も問い合わせもなかった。
各紙の報道はせいぜいベタ記事だったが、ちょっとこちらの目を引いたのは朝日の記事だ。
名指された深沢某が新潮社に抗議という事実本記に次いで「1940年、日本が朝鮮人に日本式の姓名に改名するよう強いた政策を引いて『創氏改名2・0』と題し……」と続く。
そして、今また日本名を云々するのかと。
さらに追い打ちをかけるように朝日が8月11日付の社説、また毎日も14日付の社説で、この話を蒸し返してきた。

攻撃の焦点は再び「創氏改名」。
朝日は「再び『名前』を奪うのか」の見出しでこう書く。
「名前をめぐる差別は根深い。かつて日本は植民地支配した人々に日本式の氏名を名乗らせ、心の内側まで統制しようとした」
朝日が悪質なのは、こういう居丈高の表現の中に明らかに誤った歴史を刷り込もうとしていることだ。
たとえば、創氏改名の歴史は古い。
それこそ日韓併合の1910年からすぐ日本風の通名が流行り出した。
日本は半島に戸籍をつくり出していたので、そう勝手に名前を変えるなと、きちんと警察に届け出ることを義務付けさせている。
その後も日本名にしたがる者は多かった。
貧しい朝鮮の地を捨てて満洲、中国に行く者が多く、彼らは新天地でより大きな自由が得られるよう日本名を名乗った。
なぜなら中国人は日本には畏敬の念は持っていても、朝鮮人は見下してきたからだ。
それは日本にはあまり伝えられないが、例えば光俊明著『七歳の捕虜』を読むと、そのあたりが理解できる。
著者は北支で日本軍の光部隊に拾われた孤児で、以来、大陸打通作戦を戦う部隊とともに中支、南支、さらに仏印からバンコクまで行って終戦を迎え、日本軍の軍医の養子になって日本に来た。
中国への義理立てで取ってつけたように「残忍日本軍」を最後に書き連ねるが、そのほかは正直に書かれる。
戦闘中は日本軍が見つけた保護先に預けられるが、その一つが日本名を名乗る朝鮮人。
七歳の中国人の子があけすけにバカにし、それに創氏改名した朝鮮人が悪態で返すみたいなやり取りがある。
そういう実態を隠し、創氏改名は「強制された」とか、「心の内側まで統制」とか、朝日の論説委員は嘘を書くのに何のためらいもない。
たまには取材しろ、というこちらの言い分を聞いていない証拠だ。

この社説はもう一つ歴史的事実を歪める。
それは朝鮮の「植民地支配」だ。
朝日はこれを戦後、繰り返し続けた。
しかし植民地支配とは、例えばフランス領ベトナム(仏印)や米国領フィリピンを見れば分かる。
ベトナム人は村を出るのも禁止され、出れば税金が課せられ、逃亡すればギロチンで処刑だ。
日露戦争当時、200人の有志が日本に密航して留学に来るが、仏印植民地政府は全員を指名手配し、捕まえれば死刑にした。
ホー・チーミンは外航船の船員になってフランスに行き、許可を受けて仏印植民地政府の役人になる試験を受けているが、これなど例外に近い。
しかし、深沢潮の祖父は単身日本に働きに来て、祖母を呼び寄せていると彼女が書いている。
そんなに宗主国との間を自由に行き来できるなんて植民地支配ではあり得ない。
にもかかわらず朝日は平気で朝鮮を「植民地支配」と書いて恥じない。

朝日が書けば新潮社は震えるし、韓国人は奮い立つ。
結局、新潮社は今回の一件を受け、こちらに1145回続けたコラム「変見自在」を最低でも休載しろと言ってきた。
慰安婦の嘘もまだけじめをつけていないいい加減な新聞の言い草など気にしなければいいのにと言ったが、無駄だった。
で、休載でなく連載をやめると言った。
新潮側はとてもうれしそうだった。
この稿続く。

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