続いて。

大江…加藤周一さんも若いときから日本の文化、世界の文化の問題を明快に定義した人です。彼の話がおもしろいのは、大きい範囲で考えながら、細かな言葉をぜんぶ自分で定義して使っているからです。彼の残した『日本文学史序説』(ちくま学芸文庫)と『日本文化における時間と空間』(岩波書店)は、日本の文学と文化はどういうものかを、明確に定義しています。加藤さんは自分の意見をすべて本で述べて、亡くなられました。亡くなられてから、僕は丹念に毎日読んできました。とくに若い人に読んでほしいと思います。
 簡単にいうと、『日本文化における時間と空間』には、日本人は「今」という時間の自分がいる場所のことしか考えない。「今、ここ」のことだけを長い歴史でずっと考えてきた国民だ、と僕たちに納得させるように書かれています。

ここでは…日本人は「今」という時間の自分がいる場所のことしか考えない。「今、ここ」のことだけを長い歴史でずっと考えてきた国民だ、という加藤周一大人の指摘を提示します。

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