知られざる 小沢検察審議会の闇…10月22日号、週刊朝日より。

知られざる 小沢検察審議会の闇 

告発者は?/審査員平均年齢30.9歳はなぜ?

議決から20日もたってから公表のナゾ…

 

検察審査会の「起訴すべきだ」という判断を受け、民主党の小沢一郎元幹事長(68)が強制的に起訴される。だが強大な力を見せつけた審査会の実態は知られていない。審査の申立人はなぜ匿名なのか? 審査にあたった人の平均年齢30・9歳は若すぎないか? 議決から公表までの時間差のワケは? 数々の「なぜ」を掘り下げると、組織の不透明さが見えてきた。

 

10月4日夕、東京地裁わきの掲示板に議決書の要旨が張り出された。被疑者の小沢一郎氏を、「別紙被疑事実につき、起訴すべきである」と書かれていたが、審査申立人の欄にあったのは「甲」のひと文字だけ。

「検察審査会の判断で、一部を伏せました。申立人が強姦の被害者や、被疑者が少年など、同じようなケースはほかにもあります」

 東京第一検察審査会の手嶋健総務課長はこう説明するが、これだけ大きな騒ぎになったのに、当事者が匿名ということに違和感を覚えた人は多かったはずだ。

 検察審査会法では、申し立てができるのは告訴や告発をした人、被害者や遺族などに限っている。だがインターネット上では、「右翼の活動家らしい」「反小沢勢力の隠れみのでは」などの憶測か飛び交った。

 

決着をつけたのは、10月6日付の朝日新聞(夕刊)だ。

「小沢氏告発『真実を求める会』とは」というスクープ記事が載つたのだ。申し立てたメンバーは関東近郊の60代を中心とする男性約10人で、行政書士、元新聞記者、元教師、元公務員など。政治的には「保守層」を自認。政権交代前から民主党に批判的な点で一致していたという。中傷や嫌がらせを心配し、審査会事務局に頼み名前を伏せてもらったらしい。「秘書に責任を押しつけて、小沢氏だけが逃げるとしたら、許せない」記事では、代表のこんな発言も紹介された。

 

 情報が少ないのは申立人に限らない。検察審査会そのものもベールの向こうだ。まず11人の検察審査員と審査員が出席できない場合に備え、11人の補充員も選ばれるが、議決時の男女の内訳と平均年齢以外は非公開だ。審査員の任期は6ヵ月で、最高8千円の日当が払われる。

 

審査員と補充員の計22人は、自治体が候補を選ぶ。

「指定のソフトに選び出したい人数を入力すると自動的に選ばれます。CDに焼き付けて審査会側に送る」 (都内自治体の選管職員) 審査会は集まった候補をもとに、コンピューターで審査員と補充員を選ぶ。検察審査会法では、70歳以上や学生は辞退することが認められている。「重い病気などで辞退できるという規定もあるので、3割程度が辞退することもあります」(審査会関係者) 小沢氏の前回4月の議決にかかわった11人のうち6人は5月、残る5人は8月に交代し、今回の審査が始まった。だが、東京の審査会では「審査の開始日や回数、議論の経過など個別の事案にかかわることは一切お答えできない」という。

 

しかし、兵庫県明石市の歩道橋事故(01年)やJR.宝塚線脱線事故(05年)の審査で強制起訴に結びつく 「起訴すべきだ」という判断をした神戸の検察審査会は、明石で7回、JRでは9回の審査会を開いたと明らかにしている。そこで再度、東京の検察審査会に尋ねたが、「どこまで公表するかは審査会ごとの判断。公表した議決の要旨がすべてです」 (手嶋課長)

 

小沢氏の事件は、民主党代表選があった9月14日の議決から10月4日の公表まで3週間かかった。歩道橋事故やJR脱線事故など強制起訴に結びついたほかの事件は議決の当日に要旨が公表されており、複数の法曹関係者が「長い」と首をひねる。審査会の意見をまとめるのに時間がかかったためとみられるが、その理由も明かされない。

 

元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士が指摘する。「09年5月の改正法施行で起訴すべきだと2回議決すれば強制的に容疑者が起訴されるようになり、検察審査会は新たな権力機関になった。それなのに、だれがどのような審査をしたのかは明かされない。少なくとも、審査の回数や時間、審査経過などは議決の要旨に載せるべきです」

 

 

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