最終章。

こうした事態に、成田空港はどう対抗するのか。

「来夏にも格安航空会社を誘致したい」成田国際空港会社の森中小三郎社長は力説する。羽田国際化を受け、成田は14年度にも空港容量を現在の約1・5倍に拡張して迎え撃とうとしている。しかし、かつて46力国が乗り入れを待っていた状況はすでにない。格安航空会社の誘致だけで仁川に対抗するのは無理がある。

 

「格安航空会社を呼んでも既存の路線とダブるだけ。早く未就航のロシア東部や南米、アフリカに路線を開くべき」(前出の杉浦氏)

 

しかも、航空会社の誘致には、政府間の航空交渉が必要だ。国交省の幹部はこう打ち明ける。「政府は、日航や全日空の就航要請がない国との航空交渉に消極的だが、日航は更生中で、全日空も路線拡大に慎重。その余波で成田は路線を広げられず、外国人観光客の誘致も進まない悪循環に陥る恐れがある」 

 

杉浦氏も指摘する。

「課題は羽田との競争ではなく、相乗効果のはず。そのためには両空港のすみ分けを明確にして、それぞれの強みを伸ばすべきです」 しかし、馬淵澄夫国交相は今のところ「成田と羽田を一体運用する」と言うだけで具体策は示さない。

 

「日本は羽田をさらに増強して成田に代わる国際ハブ空港にするのか、しないのか。ここをあいまいにしておくと共倒れになる」

海外の航空会社の担当者からもそんな指摘が相次ぐ。

 

経済失政が続く菅政権は、羽田国際化を最大限に演出している。しかし、重要なのはそうしたパフォーマンスではなく、日本全体の競争力が落ちないように、成田の補強を含めた国家戦略を打ち出すことだ。

     

本誌・三嶋伸一

 

 

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