週刊現代、田中秀征氏のインタビュー記事から。

総理側近によれば、菅直人総理が最も恐れる人物、それが田中秀征元経企庁長官である。市民運動家だった若き菅氏が政界入りするきっかけを作り、新党さきがけでは田中代表代行、菅政策調査会長として村山内閣を支え、橋本内閣の経企庁長官、厚生大臣としてともに入閣した。

 

菅総理の表と裏、思考回路までを知り尽くす田中氏が、かつての同志に敢えて直言するー。

 

―代表選直後は71%を記録した菅内閣の支持率が、ついに27%(朝日新聞)にまで落ち込みました。

 

年内に20%台の危険水域突入は避けられないと見ていましたが、予想以上に早かった。しかも、横浜で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の終了直後にこの数字が出たのは、菅さんにとってショックだったでしょう。議長国としてこの国際会議を成功裡に終わらせられれば支持は回復するIそれが彼の胸に秘めた復活シナリオだったはずだからです。

 

世論調査でもう一点、注目すべきは、ねじれ国会の打開方法に対する回答です(NHK調査)。「解散総選挙で民意を問うべきだ」(38%)が「政策ごとに野党と連携すべきだ」を抑え、第1位になった。これは10月の調査とは順位が逆転したわけで、即ち、菅政権に退陣しろという声が最も多くなったという意味です。菅さんにもうしばらく任せてみようかと寛容だった国民も、もう我慢の限界を超えたんですよ。

 

この先、菅政権に復活の展望があるとは思えない。今のままでは、行き着く先は内閣不信任案の可決です。私は旧知の菅さんに、そんな無様な姿をさらしてほしくない。政治家として次のチャンスを残すためにも、一刻も早く、潔く退陣すべきです。本人は「石にかじりついても」と政権にしがみつくつもりのようで

すが、国民はそんなこと頼んでいない。世論調査を見れば、むしろ「かじりつかないでくれ」と言っているんですから。

 

―中国の胡錦濤国家主席との会談で菅総理はメモを読み上げるなど、その振る舞いも国民の失望を買いました。

 

一言ぜひ言っておきたいことがある。私は、メモを読むこと自体を否定はしない。しかし、領土問題を巡って厳しいやりとりになることが確実な胡錦濤主席やロシアのメドベージェフ大統領を迎え、握手をするときも会談のときも、菅さんは相手から眼を逸らしていることが多かった。会談相手の眼を見ることができないから、視線をメモに落としているように見えた。これではいけない。

 

相手の眼をまともに見ないのは、自信がない、本気じゃない、相手を恐れているということ。これは万国共通の理解です。外交の場面でこれは致命的です。こちらが怯めば、相手から強気の発言を引き出してしまう。それは国益の損失に直結します。あのような首脳会談なら、しないほうがよほどましです。

 

思い出すのは、93年にシアトルで開かれたAPECです。私はこのとき細川護煕総理に同行した。日本では細川さんのマフラー姿ばかりが評判になりましたが、現地での細川人気は大変なものでした。パーティーなどでも各国首脳が次々に握手を求めて来る。それに対して細川さんは相手の眼を見据えて鷹揚に接する。他を圧倒する見事な風格ある態度でした。

 

―領土問題でも、菅総理は毅然とした態度を示したとは言い難い。

 

領土問題は、相手に譲り、宥和的な姿勢を見せれば、平和的に解決するというものではない。むしろ逆です。一歩譲れば、相手はここぞとばかりさらに一歩踏み込んでくる。その結果、不安定さが増し、挙げ句、戦争にまで発展しかねない。そういう基本的な素養が、菅総理には不足してます。

 

そもそも、いまの菅政権は何を目指しているのかが不明確です。菅さんは国会で、「国民主権」「二大政党制」などとお題目を唱えていますが、それは政治の枠組み、土俵の問題。国民が知りたいのは、その土俵でどんな相撲を取るのか、ということです。そこが根本的に間違っている。それに気づいていないとしたら救いがたいですね。

 

菅さんはおそらく、自分が政権を獲ることだけを優先し、総理になったら何をするのかについては、まるで考えてこなかったのでしょう。そうとしか思えない。

 

「政治ってこんなもんじゃないの」これは彼の昔からの口癖です。その場その場で、やらなければならないことだけをやる。つまり、状況主義です。本当にやりたい、目指す理想がない。

 

しかし政治は捨て身の指導者の理想主義でしか大きく動くことはない。それが冷厳な政治法則です。やはり、彼は覇道を歩んできた印象が強い。トップの為政者は王道を歩んできた人にしか務まらないということなのでょう。

 

…以下略。

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