O君の思い出…前章の、洋モクの、その後の事。
人には言えない家庭的な不幸を抱えていたO君と僕は、正に、貧乏学生だったのですが…或る日、O君が…愈々、A君の机の引き出し全部でもはいらなくなった件のベンソン&ヘッジを、全部、バッグに入れて、「芥川よ、ちょっと付き合ってくれないか」と言って、彼の親戚が住むという駅に向かった。
僕は駅の近所で待っていたのだと思う…待つ事しばし、暗い顔をして、彼は、戻って来た。
「おじさんに、こっぴどく怒られた…最高学府に進まねばならぬ道にいるはずの、甥が、煙草を売りつけに来るとは!…二度と来ないでくれ…」
僕らは、無言で、電車に乗って帰って来たのでした。
