今週号のニューズ・ウィーク…クリストファー・ディッキーさんの書き出しを読んで思った事。

彼は北アフリカの名もなき国の名もなき独裁者だった。その国の有名なところといえば、せいぜい労働者を輸出し、物価の安さで観光客にアピールするところくらいだ。しかし14日、チュニジアのジン・アビディン・ベンアリ大統領(74)が国外に脱出し、23年間以上に及んだ強権政治が幕を閉じると、アラブ世界は新時代の幕開けを予兆する一種の高揚感に包まれた。

モロッコからエジプト、さらにヨルダンからその先まで、ベンアリ政権崩壊のニュースはインターネットや携帯電話を駆け巡り、長年抑圧されてきたアラブ各国の社会に衝撃を与えた。ちょうど、89年のベルリンの壁崩壊のニュースが老朽化したソ連の不安定な独裁に打撃を与えたのと同じだ。現に長年の独裁の末、政権崩壊後直ちに処刑されたルーマニア元大統領夫妻にちなんで、チュニジアでベンアリ夫妻は「チャウシェスク夫妻」と呼ばれていた。
 

アラブ各国の政権にとって特に衝撃的だったのは、ベンアリ政権崩壊の始まり方だ。昨年末、地方都市シディブジッドで果物や野菜を売ろうとした無職の青年が警察に屋台を差し押さえられ、失業と低賃金に抗議して焼身自殺を図った。そのニュースが広がると同時に暴動も広がっていった。
 

当初チュニジア軍のトップが治安部隊の出動を拒否すると、ベンアリは軍幹部を更迭した。その後、治安部隊はデモ隊に発砲を開始、死者数は増加した。それでも暴動は続き、地方都市から首都チュニス中心部に拡大していった。どうやらその時点で、軍はベンアリを見限ったらしい。非常事態宣言と戒厳令が出され、モハメド・ガンヌーシ首相がテレビに出演して「暫定的に」大統領職を代行すると宣言した。
…以下略。

この部分を芥川が読むのにかかった時間は数十秒だっただろう。

1月23日、永観堂に行くために乗っていたJR新快速の車中である。

芥川が痴呆テレビであると断罪し、それがわたしたちの国を、この20年間、どんなに歪めて来たかと何度も指摘する理由もこういうこと。

1時間番組としてのワイドショーやニュース番組が、ナレーションや、最近の流行りのようなテロップで、この書き出しのように伝えた事が一度でもあっただろうか?

タレントやコメンテーター等の顔のアップばかりを流す事にうつつを抜かし続けてきた20年超ではなかったのか!

この書き出しには、たくまずして、所謂、5W1Hがあるが、テレビは、この報道の基本すら忘れて来たのではないか。

Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(どうして)したのか。である。しかし日本においては、「5W」にさらに下記の「1H」を含む「5W1H」であるべきであるとされる。How(どのように)…ウキペディアより。

この記者の記事は、さらに有用な事を伝えて続くのだが、最後の終わり方は、芥川が高校生の時に書いた、「羅生門」についての感想文の終わりのようだった。

…ベンアリ一家の目的地が闇に包まれていたように、チュニジアと中近東の将来もまだ闇に包まれている。

ニューズ・ウィークという世界最高レベルの週刊誌には世界最高級の記者がいるわけです。

何故?常に世界最高を目指しているからです。

誰一人、本当は危険で無味乾燥な中庸なぞを目指して、記事を、文章を書いていないからです。

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